■今季初のトップ5独占のGT300
担当エンジニアにとって最高の誕生日もドライバーの要求はもっと上に!?
今回はGT300で「GSR 初音ミク BMW」が久々の優勝を飾ったが、それはヨコハマタイヤ勢としても第2戦での「Panasonic apr PRIUS GT」以来の勝利で、久々に溜飲を下げる格好にもなっていた。しかも、本文中にもあるとおり1位から5位までのトップ5を独占するという、まさに完璧な展開。その理由のひとつとして、序盤のセーフティカーランでドライバー交代を行ったことが挙げられるが、これはある意味両刃の剣でもあり、その後天気が激変してタイヤ交換を強いられれば、敗因ともなっていた。
しかし終わってみれば、残り40周を安定して走り切るだけの性能をヨコハマタイヤが持っていたということ、さらに雨が降り始め、セミウェット状態の中でドライタイヤが威力を発揮したことも欠かされざる要因だったろう。もちろん、ドライコンディションが最後まで保たれていても、スタートで「S Road NDDP GT-R」がトップに立ち、SCランまでトップを走っていたこともあり、きっと最高のパフォーマンスを発揮したに違いない。GT300担当の石黒禎之エンジニアはこう語る。
「もっと厳しい展開を予想していました。でも、フリー走行から予選までトータル的にバランスは悪くなく、タイムはロング(ラン)も安定して良かったので、決勝でも入賞できる車両はあるだろうな、と予選の後には思っていました。実際に決勝では幅広い選択肢を持てるタイヤ選択ができたので、すごくいい内容でしたね。我々のタイヤが得意とする状況で、最大限に性能を発揮することができたと思います。残り2戦も今回のように安定した性能で、結果的に順位がついてくれば。さらにパフォーマンスをとにかく安定させて、速いラップでもパフォーマンスが落ちないよう、持続性には特にいろいろトライしていって、性能の向上に力を入れればきっと結果は後からついてくるはずです」
そう力強く語ってくれた石黒エンジニアは、実はこの日が36歳の誕生日。最高のバースデーウィンになったが、ドライバーに祝福のコメントを求めたところ……。
「一応、チェッカーを受ける時、『石黒、おめでとう』とは言いましたが、本音は、“表彰台独占できるなら、もっと早くそういうタイヤくれよと(笑)”。僕らの希望は首がちぎれるぐらい、どんなにハンドル切ってもグイグイ曲がるようなタイヤ」と語るのは優勝した谷口信輝選手。
また、新田守男選手からは「おめでとう、もっと大人になろうねぇ(笑)」と謎のコメントが寄せられた。ふたりとも少々辛口なのは、全幅の信頼を石黒エンジニアに置いているからこそ、のコメントであるのは間違いないだろう。