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  ひとつ前にもどる  
SUPER GT Round 6
開催日
2013年9月7日-8日
開催場所
富士スピードウェイ (静岡県)
天 候
小雨 のち 曇り
路 面
セミウェット&ドライ
決勝周回数
66周
(1Lap = 4,563m)
参加台数
40台
(ヨコハマタイヤ装着車 20台)
>> Report (レポート)  >> Result (競技結果)  >> Detail (カテゴリー紹介)
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鈴鹿1000kmを終え、シリーズも残るは3戦となって迎えた「FUJI GT 300km RACE」。今季2度目の富士スピードウェイでの開催であり、徐々に緊迫して行くタイトル争いの中で、ヨコハマタイヤ勢は印象的なパフォーマンスを見せることとなった。

気温25℃前後と涼しい曇天下で行われた土曜の公式予選。
GT500では「WedsSport ADVAN SC430」はアンドレ・クート選手が、そして「D'station ADVAN GT-R」は安田裕信選手がそれぞれQ1に挑むこととなった。
クート選手は残り3分の段階で1分33秒590をマークし7番手に浮上、さらに1分33秒478にまでタイムを上げたが、接戦の中13番手に。また、安田選手はファイナルラップに1分33秒391をマークも、その時点でポジションは9番手。最終的に「D'station ADVAN GT-R」は10番に留まったが、非常にハイレベルな僅差の予選の中にあって、惜しくも2台のヨコハマタイヤ勢はQ2進出を果たせず。

一方GT300のQ1では「S Road NDDP GT-R」の佐々木大樹選手がトップタイムを獲得。朝の練習走行でタービントラブルに見舞われ、予選開始直前にエンジン交換が完了するというスリリングな展開となっていたが、メカニックたちの奮闘に刺激されたドライバーふたりも発奮し、佐々木選手に続いてQ2に挑む星野一樹選手も激走を見せ、アタック2周目に1分39秒205を出し、トップに躍り出る。次の周には1分39秒198にまで短縮を果たすも、惜しくもこれを上回る車両が現れ、「S Road NDDP GT-R」は予選2番手に留まった。
また、谷口信輝選手がQ1で5番手につけた「GSR 初音ミク BMW」は、Q2で片岡龍也選手がポジションを守って5番手に。そして、前回からマシンを「マッハGoGoGo車検GT-R」に改めた、玉中哲二選手が7番手につけることとなった。

明けて日曜の決勝は午後2時のスタート。朝方には雨が降り、フリー走行はウェットコンディションでの走行となったものの、昼頃には雨も止み日差しが覗くなど、気温29℃、路面温度35℃という陽気の中、完全なドライコンディションでの66周の戦いとなった。

GT500では「D'station ADVAN GT-R」の安田選手が序盤から激しい攻防を展開。オープニングラップこそ11番手とひとつポジションを落としたものの、4周目に10位に復帰すると、5周目には「MOTUL AUTECH GT-R」をパスして9番手に浮上、7周目には1分35秒791のベストラップを刻みながら前を追って行く。一方「WedsSport ADVAN SC430」はクート選手がスタートを担当。オープニングラップに15番手まで後退も、こちらも6周目には13番手に復帰を果たし、そこからの追い上げに期待が懸かったものの、徐々にペースに苦しみポジションを下げてしまう。

「D'station ADVAN GT-R」が7番手、「WedsSport ADVAN SC430」が15番手を走行中の19周目、ホームストレート上で「Epson HSV-010」がアクシデントに見舞われてクラッシュ。パーツが散乱したため、セーフティカーが導入される。ドライバーの最低周回数規定ギリギリの22周目に隊列が整ったため、GT500では全車いっせいにピットに向かうかと思われたが、「D'station ADVAN GT-R」は雨の到来を読んでステイアウト。「WedsSport ADVAN SC430」はピットインし、荒聖治選手に交代した。

24周終了時点でレースはリ・スタート。トップに浮上を果たした「D'station ADVAN GT-R」はそこから安田選手が大逃げを打ち、「WedsSport ADVAN SC430」はラップタイムを持ち直し、荒選手が徐々にポジションを上げて行くこととなったが、30周あたりに待望の雨が降り始めるも、期待していたような雨量には届かず。
そんな難しい路面状況の中、「WedsSport ADVAN SC430」の荒選手は、35周目には9番手にまで躍進を果たしていたものの、第13コーナーでGT300車両をかわそうとしたところで濡れた路面に足をすくわれ、接触。左フロントの操舵系にダメージを受けてしまった「WedsSport ADVAN SC430」はピットに帰還も、残念ながらリタイアとなってしまう。

一方、トップを快走もウェットタイヤへの交換という状況を迎えられぬまま、徐々にマージンを失った「D'station ADVAN GT-R」は42周目にピットイン。ミハエル・クルム選手にバトンをつないだが、これで一気にポジションを下げ、11番手となってしまう。
10番手から30秒以上も遅れた11番手となった「D'station ADVAN GT-R」だが、クルム選手は霧雨が続く不安定なコンディションの中、1分35秒台というトップを上回るラップタイムを連発。じりじりとギャップを削り取ると、62周目に「DENSO KOBELCO SC430」をオーバーテイク。そのまま10番手でフィニッシュした「D'station ADVAN GT-R」は、粘りの戦いで1ポイントを獲得することとなった。

同じくGT300の決勝では、絶妙のスタートダッシュを見せた「S Road NDDP GT-R」の佐々木選手がトップで1コーナーに進入。そのままレースをリードし続けた。同じくスタートを決めた「GSR 初音ミク BMW」の片岡龍也選手もひとつ順位を上げ、4台でのトップ争いを繰り広げる。そんな中、2番手を走行していた「ARTA CR-Z GT」が接触によって順位を落としたこともあり、片岡選手は3番手に浮上した。

なおも緊張感に満ちたトップ争いが続くも、GT300では19周目からセーフティカーがコースに入ることに。そして、ピットロードオープンのボードが出されたのは21周目。この周にピットに入った否かが明暗を分けることになった。後に予報が告げるとおり、天候が激変すれば失敗に、大きく変わらなければ成功となるからだ。結論から言えば、雨はその後降り始めたものの、ウェットタイヤに換装するまでには至らず。セミウェット状態に強いヨコハマタイヤのスリックタイヤが大いに威力を発揮した。

ドライバー交代を行ったチームで最上位につけたのが、「GSR 初音ミク BMW」の谷口選手で、これに続いたのが「Panasonic apr PRIUS GT」の嵯峨宏紀選手。逆に、それまでトップを走っていた「S Road NDDP GT-R」はSCラン後にピットに入るという、タイミングの悪さによって大きく順位を落としてしまっていた。

そして、全車がドライバー交代を終えると、トップに立っていたのはもちろん「GSR 初音ミク BMW」の谷口選手で、2番手は「Panasonic apr PRIUS GT」の嵯峨選手。さらに3番手につけていたのは「クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3」の細川慎弥選手で、やはりSCラン中の交代が功を奏し、予選14番手から大きく順位を上げていた。さらに45周目には「LEON SLS」の黒澤治樹選手が4番手に、57周目には激しい追い上げを見せた「S Road NDDP GT-R」の星野選手が5番手に浮上。それぞれ順位を守って残り周回を走り抜き、ヨコハマタイヤ勢が表彰台はもちろんトップ5を独占することとなった。

久々の優勝を飾った「GSR 初音ミク BMW」の谷口選手と片岡選手は、2位でゴールしながら後車検で失格となった前回の雪辱を、わずか一戦で果たしたこととなる。
 
Driver's Voice
アンドレ・クート 選手
 【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
残念ながら我々にとって難しいレースになってしまったね。僕のスティントでは、なぜかリアタイヤが思ったように機能しなくなってしまったんだ。途中からコントロールが非常に難しくなり、ラップタイムを落とさざるを得なかった。そうしたらセーフティカーが出た。それは僕らに取って良い展開となり、荒選手が異なるタイヤで走って非常にうまく行くように見えた。おそらくトップ6ではフィニッシュ出来ていただろうけれど、残念ながらGT300車両と接触してしまい、完走できなかったんだ。これもレースだよ。
次のオートポリスでは天候にも恵まれて、良い思い出がある。今年どんな天候になるかどうかは分からないけれど、残りのシリーズ2戦とJAF GPで良いリザルトが残せるよう頑張るよ。
安田裕信 選手
 【今回の成績 : GT500クラス 10位】
今回の富士に向けてはテストで好調だったので、テスト時のデータを前提にタイヤを持ち込んだのですが、調子自体は非常に良かったと思います。僕のスティントでも、久々にレース中に4台ほどコース上でオーバーテイク出来ましたし。雨が降ると読んでいたので、チームの指示でセーフティカーの際に1台だけコースに残ったのですが、残念ながら結果的に雨がひどくはならず表彰台のチャンスも終わってしまいました。
ただ、後半を受け持ったクルム選手のペースもとても良かったですから、タイヤパフォーマンスという点では今回すごく良かったと思いますし、速さを見せることは出来たんじゃないかと。お陰で1ポイントを持ち帰ることが出来ました。オートポリスではドライで一番自信を持って臨めるサーキットだと思いますし、前回のテストでも好調だったので、今年一番のレースが見せられるはずと期待しています。
谷口信輝 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
久しぶりの優勝ですし、素直に嬉しいです。練習から僕らも速かったけれど、JAF GT勢も速かったので、まさか勝てるとは思わなかったですね。勝ちたいという気持ちは、もちろんありましたけれど。タイヤも今回、すごくいい雰囲気が出ていたし、セットアップもいい感じだったので、かなり勝ちをイメージした作戦を持ってはいましたが、こんなにうまくいくとは思いませんでした。
あとセーフティカーのタイミングも、うちのチームのジャッジが良くて、そこからかなりおいしい展開になって。その後雨が落ちてきて、ウェットに換えるほどじゃない、スリックで行くしかないっていうシチュエーションが、僕的には頑張りどころだなと、一生懸命走ってうまく逃げられたので、本当に最高の週末になりましたね。
片岡龍也 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
去年から今年にかけていいところを走っていてもいろいろあったり、チェッカーを受けるまで分からないというか最近ではチェッカーを受けた後でも、僕ら不安は多いので(苦笑)。まぁ、今回は大丈夫だと思いますから、勝ててホッとしています。今回は僕が5番手からスタートして、3番手でレースを運んでいたのですが、トップの2台と同じようなペースで走っていたものの、300kmのレースだと作戦的になかなか奇襲もできず、難しいかなと思っていたところにセーフティカーが出て。
どんぴしゃりのタイミングでピットに入れてくれたのが、最大の勝因じゃないでしょうか。もちろんクルマの調子も良かったんですけれどね。オートポリスともてぎ、残りの2戦も、『連勝してやる!』ぐらいの気持ちで臨みたいと思います。
新田守男 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 2位】
セーフティカーが出たタイミングで僕らもピットに入って、ドライバーチェンジをしたんですが、ちょうどその頃、僕らのクルマにはクラッチに問題があって。スタートするのが困難な状況になっていたんですが、ハイブリッドのモーターのおかげで発進することができたので、何とか事なきを得ました。クラッチも走ってしまえば、特に大きな問題ではないのでね。
今回はメカニックが相当早くピットワークを決めてくれたので、そこでかなり順位を上げることができました。その後は嵯峨選手がすごく長いスティントを、しかも天候が安定しない中、安定したペースで走ってくれたので、久々の完走が表彰台になってくれてちょっとホッとしました。今回はタイヤのパフォーマンスにも、すごく助けられましたね。
細川慎弥 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 3位】
前回の富士で表彰台に乗れたのですが、それからのレースでは全然噛み合なくて、成績が残せなくて……。前回の鈴鹿もクルマにトラブルが出ていたのですが、メカニックが必死に直してくれて、レースにぎりぎり間に合ったような状態でした。ただ、前回の富士でクルマのバランスはすごく良かったので、その流れでセットアップも進み、結果的に3位になれましたし、これでチームのモチベーションもまた上がると思います。ここで仕切り直せたように思うので、残りのレースでも頑張ります。
 
TOPICS
■今季初のトップ5独占のGT300
  担当エンジニアにとって最高の誕生日もドライバーの要求はもっと上に!?


今回はGT300で「GSR 初音ミク BMW」が久々の優勝を飾ったが、それはヨコハマタイヤ勢としても第2戦での「Panasonic apr PRIUS GT」以来の勝利で、久々に溜飲を下げる格好にもなっていた。しかも、本文中にもあるとおり1位から5位までのトップ5を独占するという、まさに完璧な展開。その理由のひとつとして、序盤のセーフティカーランでドライバー交代を行ったことが挙げられるが、これはある意味両刃の剣でもあり、その後天気が激変してタイヤ交換を強いられれば、敗因ともなっていた。

しかし終わってみれば、残り40周を安定して走り切るだけの性能をヨコハマタイヤが持っていたということ、さらに雨が降り始め、セミウェット状態の中でドライタイヤが威力を発揮したことも欠かされざる要因だったろう。もちろん、ドライコンディションが最後まで保たれていても、スタートで「S Road NDDP GT-R」がトップに立ち、SCランまでトップを走っていたこともあり、きっと最高のパフォーマンスを発揮したに違いない。GT300担当の石黒禎之エンジニアはこう語る。

「もっと厳しい展開を予想していました。でも、フリー走行から予選までトータル的にバランスは悪くなく、タイムはロング(ラン)も安定して良かったので、決勝でも入賞できる車両はあるだろうな、と予選の後には思っていました。実際に決勝では幅広い選択肢を持てるタイヤ選択ができたので、すごくいい内容でしたね。我々のタイヤが得意とする状況で、最大限に性能を発揮することができたと思います。残り2戦も今回のように安定した性能で、結果的に順位がついてくれば。さらにパフォーマンスをとにかく安定させて、速いラップでもパフォーマンスが落ちないよう、持続性には特にいろいろトライしていって、性能の向上に力を入れればきっと結果は後からついてくるはずです」

そう力強く語ってくれた石黒エンジニアは、実はこの日が36歳の誕生日。最高のバースデーウィンになったが、ドライバーに祝福のコメントを求めたところ……。

「一応、チェッカーを受ける時、『石黒、おめでとう』とは言いましたが、本音は、“表彰台独占できるなら、もっと早くそういうタイヤくれよと(笑)”。僕らの希望は首がちぎれるぐらい、どんなにハンドル切ってもグイグイ曲がるようなタイヤ」と語るのは優勝した谷口信輝選手。
また、新田守男選手からは「おめでとう、もっと大人になろうねぇ(笑)」と謎のコメントが寄せられた。ふたりとも少々辛口なのは、全幅の信頼を石黒エンジニアに置いているからこそ、のコメントであるのは間違いないだろう。
 
ENGINEER VOICE
藤代秀一
昨今の他社製タイヤのハイレベルなラップの安定性という点にテストの段階から意識して、タイヤ開発を続けてきましたが、今回の富士に向けてGT500では鈴鹿1000kmの結果に富士テストのデータを盛り込んで、従来のものよりもそうした点でパフォーマンスが向上しているものを持ち込みました。

予選ではQ2進出が果たせず、もうちょっと足りない部分があったと感じていますが、決勝については手応えを感じることが出来ました。「WedsSport ADVAN SC430」については前半思うようにいかない部分があり、この点については検証が必要だと思いますが、後半のスティントでは前半より硬めのタイヤでラップタイムも安定してよかったと思います。「D'station ADVAN GT-R」に関してはチームの判断でステイアウトして、もっと雨が強まっていれば大きなアドバンテージになっていたでしょう。結果的に雨が上がってしまい、順位を落としましたが前半の安田選手はもちろん、後半のクルム選手が前半と同じタイヤで非常に速いラップを刻んでくれました。リザルトは奮いませんでしたが、タイヤパフォーマンスとしては良い確認が出来たと考えています。

一方GT300では今季初の表彰台独占ということで、久々に嬉しい結果となりました。GT500同様、GT300にも今回は操縦安定性やパフォーマンスの落ち込みを改善したタイヤを持ち込んでいたのですが、チームの頑張りはもちろんですが、決勝での不安定なコンディション下で他社製のタイヤよりも明らかにラップタイムが速く、安定していたのが良かったと思います。こういう状況下で速かったという結果からは、今後の開発に向けた良いヒントが見つかるのではないかと期待しています。

GT500、GT300ともに今回の結果をしっかりと分析し、良い部分は延ばしつつ弱点を改善して、総合的にステージを高めたタイヤを開発出来るよう努力を続けます。
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