ポルトガル戦を終えて長めのインターバルに入っていたWTCCだが、この間に注目すべきニュースが3つ発表された。
まず6月20日付で発表されたのは、ヨコハマタイヤがワンメイクタイヤ供給の契約を3年延長し、2015年までオフィシャルタイヤサプライヤーをつとめることが決定したという内容である。
WTCC発足2年目の2006年から世界最高峰のツーリングカー・スプリントレースを足元で支えてきているADVANレーシングタイヤは、FIA(国際自動車連盟)や各主催者、参加しているドライバーやチームから厚い信頼を寄せられている。
そして、それぞれが求めるハイレベルな性能に対する要求を十分に満たしていることが改めて評価されて、2015年までの供給継続が決定した。これによりヨコハマタイヤは10年連続で、WTCCのオフィシャルタイヤサプライヤーという重責を担うこととなった。
次に6月末に「Touring Car Times」が、今シーズンの日本ラウンドから終盤3戦に参戦した後、2013年はフル参戦を予定しているホンダのドライバー候補として、ガブリエレ・タルクィーニ選手の名前が挙がっていると伝えてきた。
ヨーロッパで販売されるシビックは、イタリアのJASモータースポーツによってWTCCマシンに仕立てられると言われているが、2009年のWTCCドライバーズタイトルを獲得している大ベテランとJASモータースポーツが交渉を重ねているというのだ。
この点についてタルクィーニ選手も交渉の事実は認めたものの、今年は引き続きセアトを駆って最終戦まで戦うことを断言。ただ、やはり本格的なマニュファクチャラー体制で長くセアトを駆っていたタルクィーニ選手にとっては、現状のカスタマーサポートに留まる状態が物足りないのも事実のようで、より強力な体制で参戦するチームへの移籍も決して噂話で留まるものではなさそうな気配である。
そして7月に入ってから飛び込んできたニュースは、非常に残念なものだった。
WTCC発足初年度から8年間にわたってワークス体制での参戦を続けてきたシボレーが、今シーズン限りでの撤退を表明したのである。ラセッティ時代は苦しい戦いも続いたシボレーだが、地道に参戦を重ねてノウハウや技術を蓄積。
そして2009年の開幕戦からクルーズを投入するとみるみるうちに戦闘力を向上させ、遂には現在に至る“黄金期”を構築。2010年、2011年と2年連続でドライバーズタイトルとマニュファクチャラーズタイトルをダブルで獲得、今シーズンも3年連続での両タイトル制覇に向けた快走が続いている。
シボレーは今シーズンのBTCC(イギリス・ツーリングカー選手権)からも撤退しているが、マーケティングとモータースポーツの戦略を全体的に見直した結果としての苦渋の決断だったようだ。
撤退は残念であるが、ドライバーズランキングでトップ3を占めるイヴァン・ミューラー選手、ロブ・ハフ選手、アラン・メニュ選手は、それぞれに有終の美を飾るべく、ますます闘志を燃やしていると伝えられている。