3月11日にイタリアのモンツァで開幕した2012年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。カレンダーは4月に入って隔週開催とペースを早めており、この週末には第3大会(第5戦&第6戦)がモロッコの市街地コースを舞台に行われる。
モロッコでWTCCが初めて開催されたのは2009年。初のアフリカ大陸上陸、モロッコでは実に半世紀ぶりの世界選手権レースだったことから注目度も高く、かつチャレンジングなストリートファイトが繰り広げられるとあって、見どころの多い一戦になりそうだ。
今シーズンは開幕からシボレー勢が4連勝、うち3勝をイヴァン・ミューラー選手が飾って、ディフェンディングチャンピオンの貫祿を見せつけている。しかし前戦・スペインではセアトやBMWも表彰台を勝ち取り、シボレーは決して安泰と言えない空気も漂い始めている。
そしてモロッコ戦からは、補正(カンペンセイション)ウェイトの適用が始まる。直近2大会のレースにおけるタイムを基本に、一定の計算式に基づいて車種間の性能調整を図るための制度であり、コンディションが均衡化されることによってバトルは一層の激しさを増すことになるだろう。
気になるウェイト数値だが、当然のごとくシボレー・クルーズ1.6Tにもっとも大きな負担が科せられることになり、プラス40kgと発表された。次に重いウェイトを搭載することになるのがセアト・レオンWTCCで、プラス30kg。BMW320TCはプラス20kgのウェイトとなっている。
一方で、同じレオンながらメーカー製ではない独自のエンジンを搭載するサンレッド・レオン1.6Tはプラスマイナスゼロとなる。また、注目のニューカマーであるフォード・フォーカスS2000と、ディーゼルエンジンを搭載するセアト・レオンTDiはマイナス20kgと軽減措置がとられており、戦闘力の向上が期待されるところだ。
当然、ウェイトは軽いほどメリットが大きい。パワーウェイトレシオ数値の減少により、基本的に全域で加速性能のアップが図られる。もちろんコーナーリング性も良くなるし、タイヤへの負担が軽減されることから終盤での追走や逃げきりでも有利な条件が揃うことになる。
ただし、今回の舞台はパッシングポイントが限られるストリートレース。ウェイト差による有利・不利を考慮する必要はあるものの、それ以上に激しいバトルの過程において何が起きるか分からないという波乱要素を多分にコースそのものが含んでいるのだ。
事実、昨年は開催が見送られたため2年ぶりのマラケシュとなるが、2009年と2010年に行われた合計4レース、その全てが決勝中にセーフティカーが導入される展開となっている。
バトル中の接触や、スタート直後の混乱はもちろんだが、ワンミスでガードレール直行となってしまうストリートレースだけに、下位の選手が単独スピンをしてコースをふさぐような事態が生じると、上位争いにも多大なる影響を与えることになる。
こうしたストリートコースならではの背景を考慮すると、なによりベストな戦い方はポール・トゥ・ウィンを決めることに限る。確かに、過去4戦のデータを見ても、実に3戦においてポール・トゥ・ウィンで勝者が決まっているだけに、まずは土曜日の予選で各選手がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、という点から注目していこう。