ニューマシンや若手ドライバーの登場など、話題の多い2012年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。注目の開幕戦はイタリアのモンツァを舞台に開催されたが、フタを開けてみればディフェンディング・チャンピオンのイヴァン・ミューラー選手が2レースでともに優勝を飾り、改めてシボレー勢の強さが目立つ結果に終わった。
そして続く戦いの舞台はスペインのヴァレンシア。これまで2シーズンに渡って、9月にヨーロッパラウンドの締めくくりとして開催されてきたコースだが、今年は序盤戦にカレンダーが移された。
このコースでの戦いを予想するにあたり、まずは昨年を振り返ってみると、そこには王者・ミューラー選手の強さが光ることになる。2011年9月4日に行われた第17戦と第18戦、ミューラー選手はともに優勝を飾ってシボレーが4大会(8戦)を残して早々にマニュファクチャラーズ・タイトルを決めた場が、ヴァレンシア・サーキットだった。
では、開幕戦に続いてスペインの地でも、シボレーの“青い稲妻”が炸裂する展開となるのか。
中低速コースのヴァレンシアは過去のデータをひもとくと、シボレーとセアトが4勝ずつ、BMWとアルファロメオが3勝ずつと勝ち星は均衡している。特にシボレーの4勝中、2勝は前述のように昨年ミューラー選手が記録したものだ。
ここでやはり注目すべきはセアトの存在だろう。フォルクスワーゲン・グループの一員であるこの自動車メーカーは、1950年に産声をあげたスペインを本拠とする企業だ。
WTCCに参戦している「レオン」はフォルクスワーゲン・ゴルフやアウディA3と共通のプラットフォームを用いており、日本には残念ながら輸入されていないものの、ヨーロッパやロシアではサーキットフィールドでの活躍も目立つ一台。ちなみに車名の「レオン」は、スペイン北西部の地名で、レオン県、その県都であるレオン市に由来している。
当然ながら、地元ということでスタンドを埋めるファンの大半はセアトに熱い声援を送ることになるだろう。
そこでファンの期待を一身に集めることになるのが、ガブリエレ・タルクィーニ選手である。F1をドライブした経験も持つ大ベテランは、去る3月2日で50歳になった。大の「スパイダーマン」ファンとして知られ、自らのヘルメットに蜘蛛の巣をあしらっていることも有名だ。
このタルクィーニ選手、先の開幕戦・モンツァでは2010年の最終戦から実に13戦連続でポールポジションを独占し続けてきたシボレーに「待った」をかけて、セアト復活の狼煙をあげている。
決勝ではベテランらしからぬミスもあって優勝には届かなかったものの、今度は地元ファンの大歓声もその走りを後押しすることになるだろうから、リベンジに期待したいところだ。