2010年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、この週末にスペインのヴァレンシア・サーキットでヨーロッパラウンドの締めくくりとなる大会が開催される。
前戦・ドイツのオッシャースレーベンではランキング争いに動きが生じ、第2レース(第16戦)を制したBMWのアンディ・プリオール選手が、ディフェンディングチャンピオンであるセアトのガブリエレ・タルクィーニ選手と順位を入れ替えて2番手に躍進した。ランキングトップは依然として今季からシボレーに移籍したイヴァン・ミューラー選手だが、2番手につけるプリオール選手との得点差は"11"へと縮まり、選手権争いは上位3人が各マニュファクチャラーを代表選手同士の激しい接戦となっている。
ところで前戦・ドイツでは多数のペナルティが生じている。
中でも他車との接触に対して罰則が科せられたティアゴ・モンテイロ選手(セアト)とノルベルト・ミケリス選手(BMW)に対しては厳しい措置がとられ、モンテイロ選手は以降2大会、ミケリス選手は以降3大会について10グリッド降格とされている。
またシボレーのロブ・ハフ選手についても、プッシング行為に対して以降2大会の10グリッド降格処分が科せられており、これらの選手にとっては厳しい展開でスタートするスペイン戦となってしまった。
さて、選手権争いに再び話を戻すと、ヴァレンシアでの注目ポイントはミューラー選手とタルクィーニ選手の戦いぶりになるだろう。
ミューラー選手はイギリスでの第11戦、タルクィーニ選手はポルトガルでの第10戦を最後に優勝から遠ざかってしまっている。
ポルトガル以降に絞ってみると、ドイツまでの4大会/8レースでの得点はミューラー選手が101、タルクィーニ選手が87。これに対してプリオール選手は113、アウグスト・ファルファス選手は92とBMW勢の好調さが目立っている。
そこでヴァレンシア戦の戦歴を振り返ると、昨年はセアトを駆っていたミューラー選手とBMWのプリオール選手が優勝。2008年はロブ・ハフ選手とアラン・メニュ選手というシボレー勢が2レースをそれぞれ制し、2007年はアルファ・ロメオのジェームス・トンプソン選手が2レースをともに制覇している。ちなみにこの3シーズンは開催時期が5月であった。
さらにその前になると10月開催が2シーズン続き、2006年は当時アルファ・ロメオを駆っていたファルファス選手とBMWのヨルグ・ミュラー選手が優勝。2005年はセアトのジョルディ・ジェネ選手とBMWのヨルグ・ミュラー選手が優勝している。
このように特定のドライバーや車種が、ずば抜けて得意としているとは言えないのがヴァレンシア。この大会を終えるとWTCCはいよいよ日本の岡山に上陸、そして11月のマカオグランプリで最終戦を迎えるアジア・ラウンドに突入する。
シリーズ争いの行方を、そして岡山ラウンドの展開を占う意味でも、ヴァレンシアは要注目の一戦となるだろう。
また、先のドイツで2年ぶりにWTCC復活を果たした谷口行規選手の戦いぶりにも注目。オッシャースレーベンでは第1レースを17位、第2レースでは14位でともに完走を果たした谷口選手、YOKOHAMAインディペンデントトロフィーのトップ3や総合ポジションのトップ10が見える位置につけているだけに、更なる躍進が期待される。