隔週ペースでの開催が続いているWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)のヨーロッパ・ラウンド。
カレンダーは夏休みを前にしてタイトなスケジュールとなっているが、メキシコ大会の中止に伴い全11大会となった今シーズンは次のイギリスで折り返し点を迎えることとなる。
イギリスはWTCCが発足した最初のシーズンである2005年から開催国となっているが、この年はシルバーストーン・サーキットでの開催。2006年からはブランズハッチに舞台を移し、この年からコントロールタイヤに指定されたADVANレーシングタイヤとともに白熱した戦いが毎年繰り広げられている。
そして、このブランズハッチでは圧倒的な強さを見せている選手がいることを忘れてはならない。
それはシボレーのアラン・メニュ選手であり、実に2006年から2009年まで、毎年ブランズハッチでは優勝を飾り続けてきているのだ。メニュ選手はご存じの通りWTCCでは一貫してシボレーに在籍。2008年まではラセッティで、そして昨年はクルーズでもしっかり表彰台の真ん中に立ってきたメニュ選手。
まずはブランズハッチで5年連続優勝をメニュ選手が飾るのか、ここがイギリス戦における最大の見どころになるだろう。
ちなみにメニュ選手の優勝歴を細かく見ると、ラセッティの時代は全ての勝利がスタンディングスタート方式の第2レースにおけるもの。クルーズに換わった昨年はローリングスタート方式の第1レースでの優勝となっている。今回も第1レースで優勝を飾ったとしたら、クルーズというマシンがブランズハッチでのローリングスタートに強い、という分析も成り立つのではないだろうか。
ちなみに予選の速さを見てみると、2006年こそ5番手だったが、2007年はトップタイムをマークして第1レースのポールポジションを獲得。2008年は2番手タイムで同じシボレーのロブ・ハフ選手が3番手に続いた。そして昨年は再びトップタイムをマークして、第1レースでのポール・トゥ・ウィンを飾っている。
もうひとつ、面白いのはこの4年間のブランズハッチ戦が開催された時期。2008年からは今年と同じ7月の開催になっているが、2007年は9月下旬、2006年は5月下旬と気候が異なる時期のカレンダーに組み込まれていた。つまり、季節を問わず速さを見せてきていることから、メニュ選手本人はもちろん、シボレーにとっても相性が良いコースであることは間違いない。
YOKOHAMAインディペンデントトロフィーは、前戦・ベルギーで第1レースをクラス2位、そして第2レースでクラス優勝を飾った、シボレー・ラセッティを駆るダリル・オーヤン選手の躍進に注目したい。
この結果、インディペンデントトロフィーのランキングもそれまでの6位から、一気に2位へとジャンプアップ。トップのセルジオ・ヘルナンデス選手との得点差も"17"と接近しており、こちらのタイトル争いもまだまだ熱い戦いが続くことになりそうだ。
ダリル・オーヤン選手は香港出身で、2006年と2008年のポルシェ・カレラカップ・アジアでチャンピオンを獲得している。WTCCにおいてはシーズンを通じて参戦する初めての中国人ドライバーとしても注目を集めている存在だ。
なお、ブランズハッチのインディペンデントトロフィーには、昨年レギュラー参戦していたトム・ボードマン選手が久しぶりに復活を果たす。セアト・レオンのガソリン車を駆っての参戦となるが、昨年は地元・ブランズハッチでクラス初優勝を飾っているだけに、こちらも台風の目となりそうな存在だ。
さらにシボレーからは、南米のツーリングカーレースで幾多の栄冠を手中におさめてきたカルロス・カカ・ブエノ選手が参戦する。ブラジルにおけるツーリングカーレースのトップドライバーは33歳、世界舞台でどのような戦いぶりを見せてくれるかも目を離せない。