2005年発足から6シーズン目となる2010年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)が、この週末にブラジル・クリティバサーキットで開幕を迎える。
昨年は最終戦・マカオまで激しいチャンピオンシップ争いが繰り広げられ、その結果47歳のガブリエレ・タルクィーニ選手が史上最高齢となるFIA世界選手権タイトルホルダーに輝いた。また、ディーゼルパワーを炸裂させたセアトが2年連続でマニュファクチャラータイトルを手中におさめた。
2010年のWTCCについては、先に年間エントリー登録内容が発表された。
まずセアト勢から見ると、残念ながらマニュファクチャラー登録は見送られ、SR-Sportが4台体制を構築。昨年までSEAT
Sportで活躍した3選手に加えて、日本でも人気のトム・コロネル選手もチームにその名を連ねている。
このSR-Sportのみならず、Zengo-Dension Teamのノルベルト・ミケリス選手、SUNRED
Engineeringのミシェル・ニュケア選手とフレディ・バース選手が駆るマシンは全てディーゼルターボのTDIエンジン搭載車。
ちなみにSUNREDは昨年までトム・コロネル選手が在籍していたことで知られるが、一方のZengoDension
Teamはハンガリーに拠点を置くチーム。これまでハンガロリンクで開催された12時間耐久レースなどへの出場を重ねており、WTCCへは初挑戦となる。
BMW勢は前述の通りアウグスト・ファルファス選手とアンディ・プリオール選手の2台に体制を縮小したが、これは少数精鋭化と言い換えることも出来るだろう。昨年、選手権ランキングで3位と4位を獲得した両選手、熟成が進んだBMW320siのパフォーマンスと相まって、間違いなくチャンピオン争いの一角を占めるはずの存在だ。
2009年に新型車クルーズを投入、初年度ながら6勝を飾っているシボレー。
2005年のWTCC発足以来、ロブ・ハフ選手、アラン・メニュ選手、ニコラ・ラリーニ選手の3人体制を変わらず続けてきたが、2010年はこのうちニコラ・ラリーニ選手がチームを離れる。そして、替わって加入するのが2008年にセアトでシリーズチャンピオンを獲得したイヴァン・ミューラー選手というのだから、これは大きなニュースである。
開幕を控えてスペイン・ヴァレンシアサーキットでテストを終えたミューラー選手は「チームとのコミュニケーションも良好で、マシンについても様々なセットアップのシミュレーションをすることが出来た」と好感触を得ているようだ。
なおシボレーについてはこれまでマニュファクチャラー登録チームのみが年間を通じての参戦をしてきたが、2010年はYOKOHAMAインディペンデントトロフィーに年間登録するチームが現れた。
イギリスに本拠を置くbamboo-engineeringから2台のラセッティが年間エントリー。ドライバーはハリー・ボルカード選手と、ダリル・オーヤン選手である。このうちオーヤン選手は香港の出身で、WTCCにフル参戦する初の中国人ドライバーとして注目を集める。
昨年初めてマニュファクチャラー登録を果たし、新型モデルのプリオラを投入したロシアのラーダについては、残念ながら現時点でエントリーの情報は入っていない。
年間エントリーリストへの記載もなく、一部にはブラジルとメキシコの南米ラウンドをキャンセルしてヨーロッパラウンドから参戦するという情報もあるが、現時点でその動向は不明である。
このようにシーズン開幕までの間には厳しいニュースも飛び交ったが、WTCCが熱く激しいバトルを繰り広げる魅力的なレースであることには何の変わりもない。
特に開幕戦は補正(カンペンセイト)ウェイトシステムが適用されず、各車/各選手の実力が正面からぶつかり合う戦いなので、シリーズの行方を占う意味でも注目したい一戦だ。
過去の結果をを振り返るとブラジル・クリティバで開幕戦が行われるようになったのは2007年から。この年はBMWのアウグスト・ファルファス選手とヨルグ・ミュラー選手が1勝ずつを挙げた。2008年と2009年はともセアトのガブリエレ・タルクィーニ選手とイヴァン・ミューラー選手が1戦ずつ優勝を分け合っている。
果たして2010年、最初に勝利の美酒を味わうのはどの選手になるのか、間もなく熱い戦いのシーズンがスタートする。