−レーシングタイヤに使われる原料というのは、だいたいどれぐらいあるのですか?
|
三島工場 技術課 マイスター・小沢則夫 |
小沢則夫(三島工場 技術課 マイスター、以下・小沢) :
カテゴリーによっても違いますが、コンパウンドの中に10種類ぐらい、全部で20種類ぐらいでしょうか。一般車と比べても格段に多いですよ。
特に、カーボンブラックとオイルは入っている量も多いです。カーボンブラックはタイヤの強度が増しますし、オイルはグリップが良くなりますから。
−レーシングタイヤと一般車用タイヤは作るときの注意点に違いはありますか?
加藤浩(三島工場 製造課 レース工程 作業長、以下・加藤) :
基本的には同じですね。レーシングタイヤは一般車用タイヤに比べ貼りつけるものがたくさんあるのですが、その間隔が大きすぎたらダメだとか、そういった部分には気をつけています。
レーシングタイヤはほとんど人の手で張り付け作業を行っているので、非常に気を使います。
|
三島工場 製造課 レース工程 作業長・加藤浩 |
−手作業となると、やはり高い技術が必要となりますよね?
加藤 :
そうですね。気を使いながらじゃないと、タイヤは作れないです。
−実際にレースを見に行くことはありますか?
加藤 :
2007年にマカオに行かせてもらって、F3とWTCCを見ましたね。
小池信幸(三島工場 製造1課 レース工程 職長、以下・小池) :
タイヤには、製造年月と誰が成形をしたのかが分かるようになっているんですが、今年の開幕戦(SUPER
GT鈴鹿ラウンド)でGT500が優勝した時には、モータースポーツ部から誰の作ったタイヤかを知らせてもらいました。
自分の作ったタイヤが勝つと、やはりモチベーションが上がりますね。
−ワンメイク用と、複数のメーカーで争っているコンペティション用のタイヤ、作るときに違いはあるのでしょうか?
小沢 :
作ることに関しては、どちらも全く一緒ですよ。部材をまっすぐにはるというのが基本。タイヤの仕様によってはカーカスの角度がきつかったりするので、そうなると合わせにくかったりはしますが、補強の部分をぶれないように貼るというのはワンメイクレースでもSUPER
GTでも一緒です。
ただ、作業者の気持ちは少し違うかもしれませんね。ワンメイクは、今作っているタイヤがどこで結果を出すのかわからないっていうのがあるけれど、SUPER
GTについては『これは次の鈴鹿レースで走るタイヤなんだ』と。それですぐに結果が出て、そういう部分は結構ドキドキしますよ。
−ちなみにSUPER GT第6戦・鈴鹿ラウンド用のタイヤは、いつ頃作り始めたのでしょうか?
|
三島工場 製造1課 レース工程 職長・小池信幸 |
小池 :
8月に入ってすぐぐらいですね。SUGOのレースが終わってすぐに仕様書が届き、様々なオーダーを出して、GT300から作り始めました。
−鈴鹿700kmレースに向けて、何かいつもとは違うタイヤの特徴というのはありますか?
石黒禎之(モータースポーツ部 技術開発1グループ、以下・石黒) :
いつもより距離が長いから、というタイヤの仕様書は作っていません。ただ、普段の300kmレースに比べ、ロングスティントやショートスティントを取り入れようとする、様々な作戦を描くチームが考えていますので、そのどれにでも対応できるようなタイヤを準備しています。
−仕様書を作る際に一番考えることは?
|
モータースポーツ部 技術開発1G・石黒禎之 |
石黒 :
我々のタイヤを使用していただく各チームの皆さんが、楽しくレースができてなおかつ結果に結び付くようなものを提供する、ということです。そういうタイヤが、作りやすくて工程も少なければ生産サイドにとってもいいのかなと思いますが、一番に考えるのは『勝てるタイヤにすること』ですね。
加藤 :
確かに工場としては効率よく作れることも望んでいますが、やはり製造現場として『いいものを作ろう』という思いはあります。
いろんな仕様書が送られてきますし、中には一目見て『うわぁ、大変だ』と思うものもありますけど、それは勝つために届いたオーダー。そういう思いで今はみんなやっています。
石黒 :
GT300について言えば、仕様の統一化は考えていますね。すべて違う仕様だと生産側もすごく大変でしょうから、なるべく種類を少なくできればと考えることはあります。
小沢 :
たしかに車種ごとに違う仕様があると大変ですけれど、いま自分の作っているタイヤがどのマシンにつけられるのか分かって、楽しいでしょうね。
小池 :
そうですね。基本的にここはレーシングチームではなくタイヤ工場ですから、あまりレースに興味のない作業員もいれば、熱狂的にレースが好きな作業員もいます。
人それぞれですが、やはり優勝という結果につながればさらに勝ってほしいと思うし、モチベーションも上がってきます。
GT300はそれが分からないので、全車の結果を気にしてしまいますね。