第2戦の富士に続いてF1開催でも知られる国際サーキットコースを舞台として開催されるD1グランプリ。
三重県の鈴鹿サーキットには、今年もD1開催の日を待ち望んでいた大勢のギャラリーが詰めかけ、白熱した戦いを見守った。
土曜日は一日中雨に祟られてしまった鈴鹿は、D1グランプリの決勝が行われる日曜日も早朝まで強い雨が残っていた。しかしギャラリーの思いが伝わったか雨はあがり、1回戦単走は若干スタート時間を遅らせて路面状態の回復を待って行われた。
予選を勝ち抜いたのは全31台、この中から16台が決勝トーナメントへの生き残りを掛けた走りを披露する。YOKOHAMA勢では今回がAE86のラストランとなる吉岡稔記が100点満点を獲得、スピードも最速を記録して堂々の1回戦1位通過を果たした。
このほか、ランサーの熊久保信重、180SXの内海彰乃、ソアラの上野高広、そしてインプレッサの田中一弘という合計5人がベスト16の戦いに挑むこととなった。
逆バンクの審査席背後をはじめ、コースサイドを埋めつくしたギャラリーがウェービングを見せて盛り上がりは最高潮、いよいよベスト16の戦いが幕を開ける。
このころには青空も見え始め、タイヤスモークを豪快にあげるツインドリフトの醍醐味を味わえるお膳立てが整った。
1組目は吉岡 vs 田中というYOKOHAMA装着選手同士の戦い。1本目は先行する吉岡が田中に食い込む隙を全く与えず、6:4で吉岡にアドバンテージ。
しかし2本目では吉岡のドリフトが若干浅く、逆に6:4で田中にアドバンテージという判定になり、鈴鹿ラウンドのベスト16は1組目からサドンデスに突入する。
サドンデス1本目は5.5:4.5の僅差で田中が優勢だったが、2本目で後追いの吉岡が田中のインにガッチリと食い込む好走、6:4で吉岡という判定で逆転勝利をおさめた。
3組目で登場した熊久保はAE86の日比野哲也に対して1本目で全く寄せつけない走りを見せて圧勝。
6組目でシルビアの一柳和人と対戦した上野は、1本目で僅差のアドバンテージを奪われるも、先行で迎えた2本目で見事な逆転を決めてベスト8進出を果たした。
7組目では内海がスカイラインの野村謙と対戦。1本目、2本目ともに五分の戦いを演じてサドンデス持ち越しとなったが、そのサドンデスも1本目で後追い、2本目では先行を走った内海に対して野村も互角の応戦を見せて、サドンデスは2回目に突入。
この2回目では惜しくも野村にアドバンテージを奪われて敗退を喫した内海だったが、審査員からも「この二人はいい勝負をしている」と評された好走が光る一戦となった。
ベスト8に駒を進めたYOKOHAMA勢で最初に戦いに臨んだのは吉岡。対戦相手はシルビアの今村陽一である。
1本目、2本目とも五分と判定された戦いはサドンデスに突入。しかしそれでも勝負がつかず、遂にサドンデス2回目に勝負は持ち越しとなり、好勝負にギャラリーの目は釘付けとなる。
ベスト16の1回戦からサドンデス続きの吉岡はNOSのボンベを交換してスタート、それまで以上の速さで今村を寄せつけずアドバンテージを獲得。後追いにポジションを転じた続く対戦でも吉岡が速さと角度ともに勝る走りを見せて、ベスト4進出を獲得した。
この他のYOKOHAMA勢は熊久保、上野ともに残念ながらベスト4進出ならず、遂に一人残った吉岡がAE86のラストランウィンを飾るべく、スカイラインの手塚強との対戦に臨む。
1本目、スタートから全開で逆バンクまで駆け下りてきた先行の吉岡、対する手塚は徐々に離されて5.5:4.5で吉岡にアドバンテージ。
前後を入れ替えた2本目、今度は手塚が全開でスタート、吉岡も必死に食らいついていくが惜しくもあと一歩届かず判定は6:4で手塚となって決勝戦進出の夢は断たれてしまった。
しかしこれまで幾多の名勝負を演じてきた吉岡のAE86だが、ラストランとなる今回の鈴鹿でもサドンデスを何度も重ねる好勝負を演じ続けたことは、コースサイドを埋めつくした大勢のドリフトファンと全国のAE86フリークの記憶に永遠に刻まれ続けることだろう。
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Archive >> 吉岡稔記選手インタビュー (2007年9月掲載)】
(文中敬称略)