WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、初開催となったロシア・モスクワでのラウンドを終えて、ポルトガルのポルトへと舞台を移す。モスクワでは思わぬハプニングもあったものの、レースそのものはスリーワイドやフォーワイドの接近戦が随所で演じられ、WTCCの魅力を十分に楽しめる一戦となった。
あれから二週間のインターバルをはさんで迎えるポルトガル戦。昨年はアルガルヴェの常設サーキットコースで開催されたが、今年は2年ぶりにポルトの市街地コースが舞台として用意された。ポルトでのWTCCは2007年、2009年、2011年に続いて4回目となる。全長4,800mと2年前に比べて7m短いコース設定となっているが、エスケイプゾーンがほぼ皆無というチャレンジングなコースであることに変わりは無い。
市街地コースの特徴といえば、パッシングポイントが限られるという点が挙げられる。過去3回行われたポルト戦の結果を振り返っても、第1レースは全てがポール・トゥ・ウィンで決着。第2レースも3番手までの上位グリッドからスタートしたドライバーが、ウィニングチェッカーを受けているのだ。
これをさらに市街地レース全体で見ると、これまでに開催されたWTCCの全190戦中、市街地レースは36戦。そのうちの20戦がポール・トゥ・ウィンで決している上、第1レースで見ると18戦中13戦がポール・トゥ・ウィンで、その率は実に72.2%にもなる。ちなみにクローズド・サーキットでの第1レースは、全77戦中49戦がポール・トゥ・ウィンで、63.63%となっている。
こうしたデータを読み解くと、やはりポルトでもポールポジションを獲得した選手が第1レースを制する確立は非常に高いと言えるだろう。つまり予選の重要性が一層高まるわけだが、今シーズンこれまでの6大会で実に4大会の予選でトップタイムをマークしているのが、シボレーのイヴァン・ミューラー選手。既に選手権争いでもダブルスコアに近い差をつけてトップを独走しているが、その背景にはRMLが持つ豊富なデータと熟成されたマシンの高い戦闘力がある。シボレーは昨年限りでマニュファクチャラーとしての活動を終えているが、WTCC発足の年からコツコツと積み上げてきた多くの財産が、圧倒的な強さを生む現在の状況を築き上げているのだ。
一方、2大会で予選トップタイムを叩き出しているのがホンダのガブリエレ・タルクィーニ選手。スロバキアリンクでは待望の初優勝も飾ったホンダだが、タルクィーニ選手とティアゴ・モンテイロ選手が駆るワークスの2台は、最近少々影が薄くなってしまっている。
しかし、ポルトについてはタルクィーニ選手がセアト時代の2009年に優勝を飾っており、モンテイロ選手にとっては故郷・ポルトガルということもあって多くのファンから熱い声援が送られる。
マシンについても補正(カンペンセイト)ウェイトはシボレー・クルーズ1.6Tが+40kg、BMW
320TCが+20kgとなるのに対して、ホンダ・シビックとセアト・レオンは+10kg、ラーダ・グランタが−20kgとなり、シビックの快走が大いに期待されるところである。