2013年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)、第2大会はアフリカ大陸へと渡ってモロッコのマラケシュが舞台となる。2009年に半世紀ぶりのFIA世界選手権レースとして開催されて注目を集めたWTCC、2011年はスキップされたが今年で4回目の開催を数えることになる。
マラケシュ最大の特徴は、チャレンジングなストリートレースであるということだ。2013年のWTCCは、恒例の最終戦・マカオと、2年ぶりに復活したポルトガルのポルト、そしてこのマラケシュと3大会/6レースが一般公道を封鎖して設けられる市街地特設コースを舞台にして開催される。
市街地レース、それは今さら言うまでもないかもしれないが、常設サーキットコースとは比べ物にならない難しさを秘めている。コースの両サイドはガードレールに囲まれており、ランオフエリアは事実上皆無といえる。ゆえにワンミスが命取りになってしまうのみならず、多重クラッシュや他車に巻き添えを喰うかたちでレースを終えてしまう可能性もあり、思いがけない番狂わせが生じることも珍しくはない。
しかし、それでも世界最高峰のツーリングカーによるスプリントレースであるWTCCを戦うドライバーは、あくまでも貪欲にひとつでも上のポジションを獲得するべく、アグレッシブな走りを披露する。その上でストリートレースを有利に進めるための必須条件となるのが、ポールポジションを筆頭に如何に上位の決勝スターティンググリッドを獲得できるかということだ。
そこで注目度が高まってくるのは、土曜日に行われる公式予選。おさらいすると、全車が出走するQ1の結果から、上位12台が続くQ2へと進出する。ここでの順位は決勝第1レースのスターティンググリッドにそのまま反映されると同時に、上位10台がリバースグリッド配置で決勝第2レースのスタートを迎える運びとなる。
モロッコは過去の展開を見ても決勝中にセーフティカーが導入される可能性が高い。ゆえに両レースともに、ポールポジションなど前方のグリッドからスタートを迎えることは、レース運びの上で圧倒的に有利となるのだ。
ところで昨年もいろいろなデータをこのページではご紹介してきたが、市街地レースを得意とする選手といえば2012年までシボレーで戦っていたアラン・メニュ選手の名が挙げられる。しかし残念ながらメニュ選手は今年のWTCCには参戦しておらず、では次に市街地レースを得意とするのは誰なのかが気になるところ。
その選手とは、今年はセアトのステアリングを握る昨年のチャンピオン、ロブ・ハフ選手(左写真)だ。昨年こそ市街地レースでの優勝は無かったものの通算で6勝を挙げており、2013年のWTCCドライバーでは最多を誇る。一方、開幕戦を昨年に続いて連勝したイヴァン・ミューラー選手は市街地での勝ち星が通算2つ、しかもこれはともに2012年のシーズン中に記録されたもので、それまで意外にも市街地に限っては未勝利だった。
一方、ミューラー選手と並ぶ市街地レース2勝を挙げているのが、ホンダのガブリエレ・タルクィーニ選手。2010年のモロッコ・マラケシュでは第1レースでポール・トゥ・ウィンを飾っているだけに、シビックでの表彰台獲得にも期待が高まるところである。
ちなみに市街地レースの勝ち星数だが、今シーズン参戦しているドライバーに限ると、通算6勝のハフ選手に続くのは、2勝のミューラー選手とタルクィーニ選手であり、如何にハフ選手が市街地を得意としているかがお分かりいただけるだろう。