FUJI SPRINT CUPは、その名の通り距離の短いスプリントレースで競われます。シリーズ戦ではありませんが、カレンダー的には一年の締めくくりと位置づけられる一戦。我々のタイヤ開発という取り組みにおいては通常のシリーズ戦と大きな変化があるわけではないのですが、GT500とGT300が別々に、なおかつドライバーも個々にレースをする、さらに高額賞金が設定されているということで、ドライバーやチームのみなさんはいつも以上に気合いが入っているという話もあるようです(笑)。
シリーズ戦の決勝ほど長い距離を走らず、かといって予選よりは長く走る今回の一戦。シリーズ戦とは大きく異なる内容ですが、タイヤ開発においては大きな意味のある一戦です。
と言いますのも、タイヤに限らず「開発」というもの全てにおいてだと思うのですが、「これで完璧」ということは無くて常に何らかの「課題」があるものです。我々は常に課題を持ってレースやテストに臨んでいますので、走行距離の長い短いに関わらず、実際に車を走らせることで得られるデータは必ず何らかの形でタイヤ開発に繋がってくるものなのです。
ベンチテストやシミュレーション技術の進歩などもありますが、やはり実車のデータはとても大切であると言えますね。
北国からは雪の便りも届き始めましたが、11月中旬という季節柄、ドライでもウェットでも路面温度はかなり低くなることが予想されるFUJI
SPRINT CUP。こうなるとやはり、コンパウンドの部分で低温でも早い段階からグリップ力を発揮することが重要になってくるでしょう。また、このレースは予選と決勝を同じタイヤで走らなくて良いという、シリーズ戦とは大きく異なる部分もあります。
さて、みなさんご存じの通り、2014年からはGT500の車両規定が大きく変わります。
現時点では新車両とタイヤのマッチングという意味では十分なデータが無いので何とも言えないのですが、ダウンフォースが増し、ラップタイムも早くなると言われています。一方でフロントタイヤはサイズが小さくなるのですが、これは色々な意味で厳しくなると考えています。
とは言っても、まずは現在我々が抱えている技術的な課題を克服して2014年に臨むことが大切だと思っています。まだ今の段階では実車評価が出来ないので、ベンチテストやシミュレーションでの評価が中心となりますが、2014年の開幕までに大きなステップを踏めるように全力で取り組んでいきます。
このように既に2014年に向けても動き出していますが、2013年のSUPER GTはこの週末でファイナル。他社との差を詰めたいと考えて臨んだ2013年シーズンでしたが、離されないようについていくのが精一杯という結果になってしまいました。ただ、SUGO以降のレースでは、その都度開発の妥当性を確認できる内容だったと考えています。
FUJI SPRINT CUPはシリーズ戦とは異なりますが、最終戦が行われたもてぎとタイプの異なるサーキット、かつガチンコのレースということで、どういった結果を得られるのかを注目しています。
個人的には、GT500が現行規定車両で最後のレースとなるので、その雄姿を目に焼き付けておきたいと思います。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 330/710R19、330/680R18、300/680R18、330/710R18、320/710R18、300/650R18、280/650R18