■前戦富士でハイブリッド勢の初優勝を飾った「Panasonic apr PRIUS GT」
嵯峨宏紀選手に聞く、そのドライブフィール
富士スピードウェイが舞台となった、第2戦のGT300で優勝を飾った「Panasonic
apr PRIUS GT」。今回のセパンでは予期せぬトラブルからリタイアとなってしまったが、そのマシンの最大の特徴はハイブリッドシステムを備えることで、昨年のデビュー以来、着実に進化を遂げてきた。
同じハイブリッドGTで、しかもライバルメーカーのタイヤを装着する「CR-Z」勢に先駆けて勝ったことにより、この上もない喜びと感動を、ドライバーのみならずプロジェクトに関わったスタッフ全員が味わえたに違いない。
近頃ではモーターのアシストによってストレートも速い、ともっぱらの評判。もとよりJAF
GT車両とあって旋回速度の高さに定評があっただけに、今や鬼に金棒の状態か。
ともあれ、このハイブリッドシステムを手なずけるのは、そう容易くないことのように思えてしまうが、実際にはそうではないという。そこでベテラン新田守男選手とともに、「Panasonic
apr PRIUS GT」をデビュー以来ドライブする、嵯峨宏紀選手にその扱い方をレクチャーしてもらうこととした。
「ハイブリッドだからといって、何か特別なことは何もなく、このクルマだけにあるものはステアリングの右下側にある黒いダイヤル、それと左上側の赤いボタンだけなんです。その他のスイッチなどは、以前僕らが乗っていたカローラGTのものを踏襲していますし、操作系としては同じものがついています。ちなみに黒いダイヤルはハイブリッドのマップを変更する際に使い、赤いボタンはハイブリッドのアシストを得たい時に押すんです。
そんなハイブリッドの応用法ですが、通常は電気を貯めて、使って、貯めて、使って……、というのを繰り返しているんですが、たとえば予選の1周だけアタックする時の前のアウトラップなどはモーターで充電だけをして、アタックラップの時にパワーを出すようにするとか。まぁ、そのあたりをマップで調整するわけです」
マップ調整以外の操作、純粋なドライビングの違いに関してはどうなのだろう?
「回生ブレーキなので、基本的にリアの制動に関してはブレーキローターによる普通の油圧制動に加え、モーターの回生による制動、これがふたつ合わさっていますので、普通のクルマとはブレーキの効き方が若干違います。例えば、回生をたくさんしている時は回生ブレーキが強く効くので、回生を入れている時とそうでない時ではブレーキバランスが違ってきてしまいます。
だから、このクルマの油圧ブレーキだけで言うと、リヤは回生分が入っているからフロント寄りにしてバランスを取っています。そのためモーターが機能しなくなってしまうと、急にフロントブレーキばかり強くなってしまいますが、だからといって危険な状態にまで陥ることはないですね」
ところで噂では、かなりモーターのアシストがあると言われているが、実際にはどれほどのパワーフィールを感じるのだろう?
「このクルマのハイブリッドなしで走ったのは昨年のセパンだけで、それ以降は慣れてしまって今では分かりにくいんですが、ない時より明らかにあるっていう感覚がひとつと、アタックの時にマップを変更するとシフトアップが少し早くなったり、クルマが押されたりするような感覚はあります。実際、体感できるレベルにはありますよ!」
半ば控えめに嵯峨選手は語っているようだが、それでも頼もしい武器であるのは明らか。今後、より進化させることによってヨコハマタイヤ勢の勝利をひとつでも増やしてくれることを、期待せずにはいられない。