カレンダーは4月も下旬になりましたが、ゴールデンウィークのモータースポーツと言えば富士スピードウェイで開催されるSUPER
GTがお馴染みですね。今年も第2戦として行われますが、大型連休序盤の4月29日に決勝レースが行われるので、多くの人出で賑わうのではないかと思っています。
さて、戦いの舞台となる富士スピードウェイですが、みなさんご承知の通り国内屈指のハイスピードコースというサーキットです。ゆえに車両としてはダウンフォースを少なくしてトップスピードを高くするセッティングが一般的です。その反面、ダウンフォースを少なくすることから、タイヤへの入力はあまり大きくない傾向となります。
つまり、タイヤとしてはそのような入力でも十分なグリップ(メカニカルグリップ)を発生させることが、重要なポイントになると言えるのです。
もう少しコースを細かく検証していくと、富士スピードウェイは全体が3つのセクターに分かれているのですが、それぞれにとても特徴的な構成となっています。その中でも、前述した「特にメカニカルグリップの必要な区間」ということで、テクニカル要素の強い最終のセクター3を速く・安定して走れることは、レース全体を考えた場合に特に重要な要素になると考えています。
また、今回は500kmの長丁場となりますので、いつもと基本的には変わりませんが安定してレースラップを刻み続けられることが重要であることはいうまでもありません。
これらを踏まえて、昨年の後半からシーズンオフの間にかけて開発してきた、正常進化版のタイヤを投入することになります。
ところでGT500クラスではGT-RとレクサスSC430がヨコハマタイヤを装着して参戦していますが、一般的には「高速コーナーに強いSC430と、オールマイティなGT-R」というキャラクターの違いがあると認識されているかと思います。
この両車におけるタイヤ開発ですが、もちろん基本的に別の車両ですから特性は同じとは言えませんが、実は両車のタイヤを比べた場合、決して大きな差はありません。
一方では、特性の異なる車両でタイヤ開発をすることのメリットとして、異なる視点からタイヤの本質的な課題を洗い出し、それらを改善していくというサイクルを回すことで、開発の効率化が図れていると考えています。
GT300クラスでは高速コースの富士においてはFIA GT3勢が有利という下馬評もありますが、昨年の第6戦ではプリウスGTが準優勝を飾っていることも注目点のひとつですね。ハイブリッドカーにはブースト機能的なものもありますが、走行時間全体に占める割合はほんの僅かであるため、タイヤとしてその特性に応じたものはなく、基本的にはFIA
GT3車両を含めてさまざまな車両で共用できる特性を持たせたタイヤ造りをしています。
なお、GT300については昨年は他タイヤメーカーさんにポールポジションを取られてしまうことも多かったので、今年は決勝レースだけではなく予選においてもタイムを出すことを狙っています。もちろん、今回の富士もポールポジション獲得を狙っていきますので、ぜひご期待ください。
さて、最後に今回はモータースポーツファンの方から寄せられたご質問にお答えしましょう。
タイヤ開発では、業務分担として設計担当とコンパウンド(ゴム)担当の二つに大きく分けられるのですが、それぞれの仕事はどんなことをしているのか、どんな難しさがあるのかというご質問をいただきました。
まず設計担当ですが、これはタイヤの内部構造やタイヤの形状、ウェットであればパターンなどの設計・開発を行います。一方のコンパウンド担当は、当然ながらゴムに関する部分の開発がメインとなります。
こうして仕事の分担は分かれているとはいえ、両者はかなり密接な関係にあります。ですから、課題や開発方針などは常に共有化して仕事を進めています。
また、競技会の現場に出る我々のほかにも、会社の中にはタイヤ開発にとても重要な役割を担ってくれている人たちがたくさんいます。実際に挙げていったらキリが無いほど、大勢の方々に支えられているのです。そういったことは、なかなか競技の現場からは見えてこないものですが、SUPER
GTが世界でも類を見ないタイヤコンンペティションなレースゆえと言うことが出来るのではないでしょうか。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 330/710R19、330/680R18、300/680R18、330/.710R18、320/710R18、300/650R18、280/650R18