いよいよ今シーズンも、開幕戦のレースウィークを迎えました。モータースポーツファンのみなさんも開幕戦を待ちわびていたことと思いますが、タイヤエンジニアの私としても気持ちを新たに開幕戦に臨むべく闘志を燃やしているところです。
2013年の目標からお話ししますと、GT500クラスについては「まず一勝」を獲得したいですね。その上で、二勝、三勝と、もちろん複数回の優勝を獲得できるように頑張ります。そしてGT300クラスですが、こちらはもちろんシリーズチャンピオンを獲得して5連覇を達成することが最大の目標。さらにシリーズ2位、3位とトップ3を独占したいですね。こちらもかなり厳しい戦いになると予想していますが、実現出来るように頑張っていきます。
シーズンオフ中は、短時間にとても多くのアイテムを評価してきました。その中で効果を確認できたものについては「開幕戦から投入」といきたいところですが、実際には開発や調整を進める必要もありますので、順次新しいアイテムを投入していくことになるでしょう。とは言っても、開幕戦からヨコハマタイヤの高いパフォーマンスを示して行けることを期待しています。
今シーズン、GT500クラスではKONDO Racingにミハエル・クルム選手が加入してGT-Rを駆ることになりました。
クルム選手は十分な実績を持った速いドライバーであることは言うまでもなく、さらに様々なフィールドで活躍されているので、私たちの気づかなかった課題などを的確に指摘してくれたりします。ゆえにタイヤ開発のパートナーとしてはとても信頼の置けるドライバーであり、私たちにとってクルム選手の加入はメリットが大きいと考えています。
それから、情けない話でもありますが「日本語で十分なコミュニケーションを取れる」という点も大きいです(笑)。なんていう冗談(?)はさておき、開発の精度やスピードがさらに上がると感じているところです。
一方のGT300クラスは、先にFIA BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)が発表され、車種によってリストリクターでの調整などが行われました。この影響で、同じ車両でも昨年とはパフォーマンスが違ってくるものがあるでしょう。性能調整で言えばFIA
BOPに注目が集まりがちですが、JAF GT勢の「GT500と同じリストリクター」という規則も衝撃的なものですよね。
これらによって、昨年以上にFIA GT3勢とJAF GT勢がコース上で激しいバトルを展開する場面が増えてくると思います。燃費的には不利と言えるFIA
GT3勢がどのような戦略でレースに臨んで来るのか、ここはレースファンの一人としても興味深いところです。
ところでこれらの性能調整が、タイヤの開発方針について影響している部分は現時点ではありません。方針そのものとしては変更なく、「様々な戦略に応えられるタイヤ」を造り上げていく必要がある、という従来からの認識を持っています。
また、GT300クラスでは注目のニューカマーとして、マクラーレンMP4 12C-GT3の存在が挙げられます。この弩級のスーパーカーに対しても、開発については順調に進んでいます。もちろんシリーズが開幕してから、今の開発内容で十分なのかとか、開発のスピードを加速させなければならないか、といったことが見えてくるのだと思います。
今後もマクラーレンに限らず、「他メーカーとの差」をきちんと把握した上で、課題を明らかにして「勝てるタイヤ」の開発を推進して行きます。
最後に、改めて開幕戦に臨む思いとして、SUPER GTの場合は開幕戦と最終戦がいわゆる“ガチンコ勝負”であることが大きいものです。私たちタイヤエンジニアにとっても、“ガチンコ勝負となる開幕戦で勝つ”ということは、重要な要素であると考えています。
今年は昨年に続いて岡山の地で開幕を迎えますが、こうしたことから「どこのコース」であるかということよりも、やはり「開幕戦」だから特別な思いで臨むことになるのが本音のところです。
ぜひ今年も、ヨコハマタイヤを装着して戦うドライバー&チーム、そしてヨコハマタイヤへのご声援を、よろしくお願いいたします。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 330/710R19、300/680R18、330/.710R18、320/710R18、300/650R18、280/650R18