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WTCC Round 5&6
開催日
2012年4月14日〜15日
開催場所
マラケシュ・市街地コース
(モロッコ)
天 候
第1レース : 曇り
第2レース : 曇り
路 面
第1レース : ドライ
第2レース : ドライ
決勝周回数
第1レース : 12周
第2レース : 11周
(1周 = 4,624m)
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イタリア、スペインとヨーロッパを転戦してきたWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、その舞台をアフリカ大陸に移した。2年ぶり3回目の開催となるモロッコ・ラウンドは、マラケシュの市街地に設けられた特設コースを使ってのストリートレース。過去2大会・4戦では全ての決勝でアクシデントが発生してセーフティカーが導入されているという、サバイバルな一戦を迎える。

開幕から4連勝を飾っているシボレー勢、中でも3勝を挙げているディフェンディングチャンピオンのイヴァン・ミューラー選手が強さを見せている2012年シリーズの序盤戦。しかし、一方ではBMW勢やセアト勢もスペインでは表彰台を獲得し、常勝・シボレー勢も安泰とは言い切れない。
さらに今回からは補正(カンペンセイション)ウェイトの適用が始まることもあり、まずは予選で各車のパフォーマンスがどのようになっているのかに注目が集まった。

土曜日の公式予選、1回目と2回目でともにトップタイムを叩き出したのはシボレーのアラン・メニュ選手。第1レースのスターティンググリッドを決する予選2回目の結果は、以下ロブ・ハフ選手(シボレー)、トム・コロネル選手(BMW)、ミューラー選手と続いた。
また、今回はニューカマーのフォード・フォーカスが2台ともに予選2回目への進出を果たした。結果はトム・チルトン選手が8番手、ジェームス・ナッシュ選手が10番手となった。
なおセアトのガブリエレ・タルクィーニ選手も予選2回目への進出を果たしていたが、走行後の検査で最低重量違反が発覚して全タイム抹消の処分に。決勝は最後尾グリッドからのスタートによる出走が許されることとなった。

決勝が行われる日曜日は、やや雲の多い空模様。会場に多く設けられている色とりどりの旗もたなびく程度の風が吹いているが、その風はやや重い感じで雨の心配も脳裏をかすめていた。
幸いに決勝は2レースともに雨に見舞われることなく、まずは第1レースがローリング方式でスタートを迎える。

注目のスタート、そこにはやはり波乱が待っていた。
4番手スタートのミューラー選手、さらに5番手スタートのペペ・オリオラ選手(セアト)が、ややスタートのタイミングを逸したコロネル選手をかわす。
その後方は団子状態で、ターン1でナッシュ選手に地元モロッコのヒーローでもあるメルディ・ベナニ選手(BMW)が接触、ナッシュ選手のマシンは大きく破損して身動きが出来なくなる。

そんな混乱を尻目にターン3ではシボレー勢が早々にトップ3を独占して隊列走行をはじめた。これを追うのはスタートでのミスを取り戻したいコロネル選手、しかしターン5でアレックス・マクドワル選手(シボレー)に追突されてしまい、大きくポジションを落とすアンラッキーな展開に。

こうした混乱、特にナッシュ選手のマシンがストップしてしまったため、セーフティカーが今回も導入されてしまう。
3周目からレース再開、リ・スタートは大きな混乱も無く各車1コーナーへと飛び込んでいく。

中盤にかけて激しくポジションを争ったのはフォードのチルトン選手とBMWのディアステ選手。4周目の最終コーナーでインをさしてチルトン選手が5番手を奪うと、ディアステ選手が猛追。ただ、ターン5はコース外のエリアの停車車両があったためにダブルイエローコーションとなっており、ただでさえパッシングポイントが限られるマラケシュにおいて、ディアステ選手にとっては厳しい展開に。

延々と続いたバトルは9周目、ターン8の進入でディアステ選手が一気に並びかけ、テール・トゥ・ノーズ状態のままで2台が派手に縁石でジャンプする片輪走行状態で続いていく。
しかし必死の抵抗を続けたチルトン選手だったが10周目にディアステ選手の先行を許す結果に。その後は11周目にフランツ・エングストラー選手(BMW)にもポジションを譲ったものの、デビューイヤー3大会目としては果敢な走りとマシンパフォーマンスを見せてくれた。

上位陣はトップ3が安定した走りでチェッカー。シボレー勢が表彰台を独占し、その真ん中にはメニュ選手が立ってスペインからの連勝を飾った。またYOKOHAMAトロフィーはスタート早々に総合4番手を奪ったオリオラ選手が快走、今季3勝目を飾った。


約2時間ほどのインターバルをはさんで迎えた第2レース(第6戦)。
タルクィーニ選手のグリッド降格などにより、ポールポジションにはフォードのジェームス・ナッシュ選手がつけ、2番手はティアゴ・モンテイロ選手(セアト)、3番手がエングストラー選手という順でグリッドについた。

スタンディング方式でスタートする第2レース、当然のごとく注目はこのスタートを得意とするBMW勢に集まる。レッドシグナルが消灯して迎えたスタート、8番手グリッドのコロネル選手は左のウォール側にラインを取って、一気に前にいるオリオラ選手らをパスする動きに出た。
ところがコロネル選手の2台前に陣取っていたフォードのチルトン選手もウォール側のラインに車を寄せたため、コロネル選手は行き場を失うかたちになってしまう。
3番手スタートのエングストラー選手はモンテイロ選手をかわしたもののトップを奪うには至らず、1コーナーはポール・スタートのナッシュ選手が守るかたちに。

一方で後方から怒濤の追い上げを見せていたのがシボレー勢。
2周目のターン3ではディアステ選手をかわして5番手のミューラー選手以下、ハフ選手、メニュ選手と3台並びで更に前を行くモンテイロ選手を射程に捉える。そして3周目の再びターン3、まず進入でミューラー選手がモンテイロ選手の前に出ると、出口ではハフ選手とメニュ選手も続く。さらに最終コーナーではコロネル選手のインをミューラー選手とハフ選手が奪って、ミューラー選手は3番手に浮上。

4周目から5周目にかけて、ここまでトップを守ってきたナッシュ選手、そして2番手につけていたエングストラー選手、両者にシボレー勢が容赦なく襲いかかる。
まず4周目のターン8進入でエングストラー選手とミューラー選手は軽く接触を伴いながらシケインを通過、ここでミューラー選手が先行し、さらにハフ選手も続く。
5周目にはターン3でナッシュ選手の真後ろにつけたミューラー選手、続くターン4のブレーキング競争で前に出て、レースの折り返しを待つことなくトップを奪うことに成功。

この後、ハフ選手とメニュ選手もナッシュ選手をかわし、第1レース(第5戦)と同様にトップスリーを独占したシボレー勢がチェッカーを受けることに成功、2レース連続の表彰台独占を実現した。
また、YOKOHAMAトロフィー争いは終盤の見どころとなった。主役はオリオラ選手とディアステ選手、ただし直接対決ではなく、それぞれがポジションアップを狙ってマニュファクチャラー勢と激しいバトルを展開した。
5番手を走っていたディアステ選手は、前を行くコロネル選手とのBMW対決。一方で7番手のオリオラ選手は、トップを奪われたナッシュ選手とのセアトvsフォードのFF対決。
結果的に両者ともにポジションはそのままにチェッカーを迎えてディアステ選手がYOKOHAMAトロフィーの優勝を飾る結果に。最終ラップまで続いた激しい攻防戦は観客やテレビを通じて観戦する多くのファンを魅了した。
 
Driver's Voice
アラン・メニュ 選手
 【今回の成績 : 第5戦 優勝/第6戦 3位】
ポールポジションを獲得できたこともあって、思った通りのレース運びをすることが叶いました。まず最初にスタートではミスをしないことが重要でしたが、その点も問題なくトップを守りきれて嬉しく思っています。
市街地コースではポールからスタートすることが有利ですが、ミスをせずにマシンを壊すことなく最後まで細心の注意を払わなければなりません。私は市街地コースに強いと言われていますが、マラケシュでも勝てて満足しています。
イヴァン・ミューラー選手
 【今回の成績 : 第5戦 3位/第6戦 優勝】
今回も私たちは最高のマシンで戦うことが出来ました。グリッドは7番手からのスタートでしたから、勝てたことにはとても満足しています。
私はターン1と2の間が速かったので、ほとんどのライバルをここで追い越しました。こんな狭いコースで7番手から優勝に届くとは自分でも信じられませんが、マシンの速さが大きな武器になりました。
 
FEATURED DRIVER
■ジェームス・ナッシュ 選手 (Team Aon)

今季からWTCCにデビューした2台のフォード・フォーカス S2000。そのうちの1台を駆るジェームス・ナッシュ選手は、1985年生まれの26歳というイギリス人ドライバーだ。

2000年、15歳でカートを始め、2006年から4輪レースに転向。同年と翌'07年にイギリス・フォーミュラ・フォード選手権に参戦、'07年にはシリーズ2位の成績をおさめた。

2009年からはBTCC(イギリス・ツーリングカー・選手権)に参戦、初年度はシボレーラセッティ、2年目と3年目はボグゾール(オペル)・ベクトラを駆る。2011年は1勝を挙げ、インディペンデントトロフィーを制しており、この実績を引っさげて今季のWTCC参戦となった。

ちなみにプライベート情報を見ると、まだ独身とのこと。趣味は写真撮影と旅行であると、WTCCの公式プロフィールに記されている。
 
TECHNICAL INFORMATION
今季初の市街地コース開催となったマラケシュ。一般的な市街地コースと同じく、常設型サーキットに比べて路面のμが低く、タイヤへの負担は本来なら低いコースだ。路面のμが低いためにスライドや空転でコンパウンドが削られていくように摩耗が進むが、ADVANレーシングタイヤにとって摩耗面での問題は全く無かった。

ただ、WTCCは縁石を使って派手なジャンプもいとわないアグレッシブな走り方で戦われる。ゆえに他のレースでは考えられないような過大な入力という負担がタイヤに加わることになるが、2レースを通じてタイヤの破損などトラブルは一切生じなかった事からも、WTCC用のADVANレーシングタイヤが選手や主催者の信頼を集めていることがお分かりいただけるだろう。
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