日本では、広く“モータースポーツのファーストステップ”として認識されているジムカーナ競技。JAF(日本自動車連盟)が発給する競技運転者B級ライセンスを所持していれば参戦できるため、まずライセンスを取得してジムカーナからモータースポーツを始めたという方も全国に多い。
また、B級ライセンスを所持してジムカーナやダートトライアルというスピード行事を完走することにより、A級ライセンスへの昇格資格を得られることから、レースを目指して、まずはジムカーナに出場するというのも一般的な流れのひとつであった。
しかし2012年、JAFはライセンス制度を改正。スピード行事への参戦資格となるB級ライセンスを経なくとも、最初からA級ライセンスを取得することが可能になったのである。
これは、ジムカーナの存在感がより高まることにつながるとも言えるだろう。ジムカーナが最も身近なモータースポーツであることには変わりなく、その手軽さや奥深さ、コンパクトカーからエコカー、ハイパワー車まで幅広い車種で楽しめる懐の深さが、今の時代に改めて注目を集めることになることは間違いない。
改めてジムカーナについておさらいすると、競技形態は1台ずつが決められたコースを走行して、タイムを競い合うというものである。コースはミニ・サーキットや広い敷地の駐車場などに設けられ、パイロンを用いてスラロームやターンセクションが設けられる。
このコースを1日に2回走行してベストタイムを競い合うわけだが、正式なコースは決勝当日の朝に発表されるのが常。複雑なコースを走行前の慣熟歩行で確認し、レイアウトはもちろんのことコース上の各所の路面状態やμ、傾斜なども考慮に入れて、100分の1秒単位で速さを競い合うのだ。
サーキットでのレースとは異なり、直接的なライバル同士のバトルはそこには存在しない。しかし、だからこそ会場に足を運べば、一人一人の選手の走りを手に汗握りながら観戦することになり、フィニッシュ後にタイムがアナウンスされて逆転劇が起きたりすると、会場全体が大きなどよめきに包まれるなど、選手と一喜一憂を共有しやすいモータースポーツカテゴリーであると言える。
そんなジムカーナ競技の最高峰に位置するのが、全日本ジムカーナ選手権。2012年は北海道から九州まで全9戦のカレンダーが組まれており、さらに最終戦終了後には選手権とは別に全日本ドライバーと各地区の猛者が対決するJAFカップも開催される。
今年はフルパイロンコースでの戦いが復活、しかも日程は最終戦に組み込まれた。トップランカーたちが繰り広げる妙技の共演は、間近で観戦するもよし、自ら挑戦状を叩きつけるも良しという、手軽で身近ながら厳しい真剣勝負の舞台が全日本ジムカーナ選手権である。