日本におけるJAF公認モータースポーツ競技会の分類としては、ジムカーナとともに「スピード行事」に属するダートトライアル。決められたコースを1台ずつ走行、1日に2トライを走ってベストタイムを競い合うという競技形態は、ジムカーナと全く同じスタイルだ。
ただし、その名称からもわかるようにコースがダート路面、つまり舗装されていない道を用いるのが最大の相違点。全国各地にある専用のダートコースでは毎週さまざまなイベントや公認競技会が催されているが、その頂点に位置するのが全日本ダートトライアル選手権だ。
ダート路面を走るということで、ジムカーナのみならずラリーとの共通項もあるダートトライアル。かつてはラリーを主戦場とするドライバーが練習を兼ねて参戦していたことも多く、その逆にダートトライアルからラリーへと転じて活躍を見せている選手もいる。
例えば近年はAPRC(FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権)を戦っている炭山裕矢選手は、ダートトライアルで腕を磨いてラリーへと転じた。さらに今年は、APRCを戦ってきた田口勝彦選手が全日本ダートトライアル選手権にスポット参戦することも発表されており、こちらもどのような戦いぶりをみせてくれるのか注目の集まるところだ。
ダートトライアル、ジムカーナ、ラリーの共通点と言えば、レースとは異なり1台ずつが走行するスタイルであるということ。このため直接的な抜き合いやバトルは生じないものの、参加する身としては“自分自身との戦い”という側面も強く、いかに本番で100%の力を出し切れるかが勝負の鍵を握っているといえる。
しかも、同じダートを走ると言っても、ラリーに比べてダートトライアルは圧倒的に距離が短い。全日本戦でもスペシャルステージの合計で50km以上を走るラリーに対して、ダートトライアルは1回につき90秒程度で走りきれるコースを、僅か2回しか走行できない。
つまり、逆転のチャンスも非常に限られているわけで、ダートトライアルのドライバーには慣熟歩行などを通じて確実に路面のコンディションを読み取る力や、スタートからフィニッシュまでで100%の力を出し切る体力と精神力も求められるのだ。
一方、観戦という側面からダートトライアルを見ると、専用コースでの開催ということが大きな観客へのメリットとなる。
国際サーキットコースのように何もかもが整っている施設ではないものの、コースの大半を見渡せる観戦ポイントが多く、トイレや食事についてもある程度の用意はされていることがほとんどなので、観戦初心者や家族連れでも抵抗は無いだろう。
もちろん折り畳みの椅子やポンチョなどの雨対策、防塵のためのマスクや手拭いといったものを持参することが望ましいが、間近に盛大な土煙をあげて豪快なドリフトでコーナーを次々に駆け抜けていく様は、一度観戦すれば必ず虜になるはずだ。