■最終戦で見事大逆転タイトルの 「ENDLESS TAISAN 911」
名門でついに花開いた苦労人たち
「ここまで表彰台には3回も上がれたけれど、優勝はなかなかできず、つらいレースが続いていました」と峰尾恭輔選手は語っていたが、この最終戦の勝利でそんな思いはすっかり晴れたどころか、チャンピオン獲得の喜びに今はどっぷり浸っていることだろう。
Team TAISANは、今年GT300に挑むにあたり、久々に新車を導入。昨年に引き続き峰尾選手を起用するとともに、新たに横溝直輝選手を招き入れ、またエンドレスとのジョイントで、Team
TAISAN ENDLESSとしての参戦となっていた。
名門同士が組むからには、絶対に負けることは許されない。そんな強い決意を抱き、チームもドライバーも挑み、岡山での開幕戦ではポルシェ911
GT 3Rが期待どおりのパフォーマンスを発揮して、いきなり2位入賞を果たす。
「次は優勝!」と目標を高く掲げるも、なかなか優勝に恵まれなかったのが、冒頭に挙げた言葉の由縁である。コンスタントな上位入賞によって、最終戦までチャンピオン獲得の権利を残してはいたが、ランキングは3位でトップとの差は9ポイント。たとえ優勝出来たとしても、ライバル2チームの成績次第という、難しい立場ではあった。
だが、峰尾選手、横溝選手ともに諦めることなく、「絶対に勝って決める」と信じて挑めたのは、チームが豊富なチャンピオン獲得経験を持ち、そういう気持ちの持たせ方にノウハウを保つからだ。
その大一番となった最終戦もてぎ。予選は2番手で、ポールはランキングトップの「HANKOOK
PORSCHE」。
だが、「選んだタイヤは決勝に自信がある」と、横溝選手がきっぱり言い切ったように。決勝がウエットコンディションに転じ、レインタイヤを試せたのはレース前のウォームアップ、8分間のみ。それでも完璧なチョイスで対応し、ライバルチームを圧するマージンを得ることになった。
「あまりプレッシャーのようなものはなかったですね。勝つしかない。追う立場でしたから、かえって良かったのかもしれません。今まで優勝がなかったから、ただただ勝ちたかった。勝てばきっと結果もついてくると信じていましたから。僕のレース人生、今までいろいろ人に拾ってもらって育ててもらったので、こうやってチャンピオンになれて、ようやく恩返しが出来たと思います」と峰尾選手。
そして横溝選手も「去年はシートがなくて、ずっとテレビで見ていた光景の中にボクがいるのが、何か不思議な気分であると同時に、これまで応援してくれた皆さんにやっとお礼が言えます」とふたりが感謝を欠かさなかったのは、いかにここまでの苦労が大きかったかを意味しよう。
シリーズは終了したが、まだこの後にJAFグランプリが残っている。ひとりずつ走るスプリントレースで揃って優勝を飾ることが出来れば、より喜びは増すことだろう。その意味ではもうひと仕事残されてもいる。