ハイスピードな富士スピードウェイでは、車両のセットアップはダウンフォースを減らした高速域を重視するのが一般的です。この場合、テクニカルなコース終盤のセクター3では、ダウンフォースがさらに少なくなるためにタイヤに掛かる荷重が小さくなります。
タイヤ開発の面から言えば、高速域や高荷重域では、それに耐えうる構造であることが第一。また、タイヤが発生する力は、基本的にタイヤに掛かる荷重に比例するのですが、セクター3のように荷重が小さくなる領域でも十分な力を発揮できるようなタイヤが求められます。
それぞれ、高荷重・低荷重で背反する部分もあるのですが、これらの要素を高い次元で両立することが求められるわけです。
SUPER GTでは事前に公式なテストがありますが、先日のオートポリスもそうだったのですが、今年はなぜか雨に祟られてしまうことが多いんです。十分やタイヤ評価を出来ないままに実戦へと臨むことも多かったのですが、富士スピードウェイでの公式テストは安定した天候とコンディションの下で十分な評価を行うことができました。その上で高いパフォーマンスを示すこともできて、特にGT500クラスの2台は好タイムをマークしました。
前戦の鈴鹿1000kmでも上り調子のパフォーマンスを示すことができましたが、今回は2台揃ってさらに高いポジションでレースを終えられることを期待しています。
タイヤについて改良が進んだポイントとしては、予選でより上位に行くためのパフォーマンスと、安定したレースラップを刻めるパフォーマンスの両立ということになるでしょうか。
また、鈴鹿1000kmで今シーズン3回目のヨコハマタイヤ装着車による表彰台独占となったGT300クラスですが、こちらはドライバー、マシン、タイヤが三位一体となって常に高いパフォーマンスを見せられていると思います。
ただ、それを実現させるために、タイヤとしては車種ごとの特性やニーズに対して、必要とされるさまざまな性能を高次元にバランスさせ、求められる性能を満たすことが必要となります。実際には、様々な車種で一様に高いパフォーマンスを発揮させることは決して容易ではありません。継続的な評価から共通の課題を明らかにして、それらを着実に改善していくという、地道な積み重ねが重要になってきます。
ところで今週末の天気ですが、現時点(9月7日・金)の予報によると秋雨前線の影響で快晴とはいかないようです。
この時期の富士スピードウェイは天候による温度の変化が大きく、持ち込みセット数を厳しく制限された現在の規則では、コンパウンドの選択がとても重要になってきます。ドライ、ウェットともに想定している温度に対して、低温・高温いずれに振れてしまった場合をも考慮して、数種類のタイヤを持ち込みます。ただ、ヨコハマタイヤは温度の守備範囲が広いという強みもありますから、大きく外してしまうことはないでしょう。
さて、最後に個人的な話になりますが、富士スピードウェイの思い出をひとつご紹介しましょう。
幾多の名勝負が繰り広げられてきた富士スピードウェイでのGTですが、私にとってもっとも思い出深いのが2000年の第4戦として8月に開催された「JAPAN
SPECIAL GT CUP」です。当時は全日本GT選手権の時代ですが、私はこの年からGTの担当となり、シーズン当初に方向性を決めて、開発を推進していました。そして、この第4戦で新たに開発した技術を用いたタイヤを初めて投入したのです。
第3戦までの結果は決して満足いくものではなかったのですが、この第4戦でデンソーサードスープラGT(影山正彦選手/ラルフ・ファーマン選手)が準優勝を獲得、開発の方向性が正しかったことを確認できました。
振り返ってみると、我々の開発の方向性を決定付けたという意味では、とても重要な一戦であったと考えています。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 280/650R18、280/680R18、280/710R18、300/650R18、300/680R18、330/680R18、330/710R18、330/710R19