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PREVIEW
シリーズ戦は全8戦のカレンダーとなる2012年のSUPER GT、後半戦の皮切りは伝統の「鈴鹿1000km」だ。
1966(昭和41)年に第1回が開催された真夏の祭典は、今年で第41回を数える。2006年からはSUPER GTの一戦に組み込まれたが、2009年からはレース距離を700kmに短縮。そして2012年、4年ぶりに伝統の1,000kmに決勝距離を戻し、シリーズタイトルの行方を占う上でも重要な一戦として改めて注目を集めることとなった。

全国から猛暑のニュースも多く伝わってきている日本列島の夏だが、マレーシアのセパン戦にもひけをとらない暑さとの戦いになる可能性の高い鈴鹿1000km。
もちろん暑さはマシンとドライバー、そしてタイヤにとっても目には見えない敵であり、特にタイヤについては長丁場を戦う上で暑さを克服して安定したパフォーマンスを発揮することが求められる。

そんな中、特にGT300クラスでは2009年からヨコハマタイヤ装着車が優勝を飾ってきている点に注目したい。さらに言えば、2010年、2011年と2年連続で表彰台の真ん中に立ったのは山野哲也選手と佐々木孝太選手がドライブしたレガシィB4、水平対向エンジンを搭載するマシンが強さを見せている。
今年は話題のBRZにマシンをスイッチしたが、初優勝なるかがまずは最大の注目点だ。

また、去る7月20日から21日にかけて開催された公式テストでは、2日間とも雨まじりのスッキリしない天候となってしまったものの、初日は「triple a vantage GT3」の星野一樹選手がトップタイムをマーク。2日目にはSUGOで優勝を飾っている「S Road NDDP GT-R」の関口雄飛選手/千代勝正選手組がトップタイム、この両者は二日間でトップタイムとセカンドタイムをともに記録して順位を入れ替える好調ぶりを見せている。
さらに3番手タイムを初日は「エヴァンゲリオンRT 初号機 アップル紫電」の高橋一穂選手/加藤寛規選手/濱口弘選手組が、2日目は「マネパ ランボルギーニ GT3」の織戸学選手/青木孝行選手組がマークして、結果的に2日間のテストを通じてトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占。

テストから好調さを見せるヨコハマタイヤ装着車、決勝レース本番での活躍に、ますますの期待が高まっている。
 
CIRCUIT
全長5,807kmのコースは、世界的にも珍しい立体交差をもつという特徴がある。長いストレート、前半の高速コーナー、ヘアピンやシケンといった低速コーナーと、サーキットコースというものを構成する要素が全て盛り込まれているのが、鈴鹿サーキットの特徴である。

ゆえにドライバーにとっては、攻略し甲斐のあるコースであると同時に、テクニックを磨き、鍛え上げるのにも最適なコースであると言える。“鈴鹿育ち”のドライバーがトップクラスに多いこと、クラブマンレースからハイレベルな戦いが演じられ、鈴鹿にわざわざ焦点を絞って参戦するドライバーが全国からやって来ていることが、その証だ。

伝統の決勝距離である1,000kmに復活する今回、8月19日(日)の決勝レースは12時30分のスタートが予定されている。173周のレースがチェッカーを迎えるのはおよそ6時間後、観戦する側も長丁場の一戦となる。
しかし、逆に言えばそれだけ色々な楽しみもあるというもの。スタートシーンをホームストレートや1コーナーで観戦した後、逆バンクやシケイン、ヘアピン、脚に自信のある方ならスプーンと、サーキットの各所にあるポイントを巡るだけの時間が十分にあるのだから。また、鈴鹿サーキットは遊園地も併設されているので、決勝レース中に観覧車からコースを眺めることも可能だ。もちろん、フィニッシュ後に打ち上げられる花火も必見。

ただ、当然ながら暑さが厳しいことも予想されるので、熱中症対策は万全を期しておきたい。コースサイドも各所に自動販売機や休憩スペースが用意されている鈴鹿であるが、こまめな水分補給や、適切な日陰での休憩をとるなどして、体調管理にも気をつけて真夏の祭典を楽しみたいところ。

なお、併催レースとしてシリーズの第7戦&第8戦が開催されるGT Asia、こちらはヨコハマタイヤのワンメイクとなっている。GT300クラスでも台数を増しているFIA GT3マシンが主役のGT Asia、こちらの戦いにもぜひ注目していただきたい。
 
ENGINEER PREVIEW
ADVAN TIRE ENGINEER
藤代 秀一 =Shuichi Fujishiro=
横浜ゴム タイヤグローバル技術本部
MST開発部 技術開発1グループ

SUPER GTのGT500/GT300両クラスにおける、タイヤ開発全般に携わる。
今回の鈴鹿は1000kmの長丁場であるがゆえ、トラブル無く完走することが最も重要になります。チームによっては3人目のドライバーを登録しているところがあったり、ピットインやタイヤ交換のタイミングなど、様々な作戦を組み立ててレースに臨むものと思われます。
そんな中でタイヤとしては、こうした様々な作戦に対応できる“懐の深いタイヤ”を準備したいと考えています。

また、今年のマシンはGT500/GT300ともに、大幅なパワーアップが図られています。コースについても鈴鹿サーキットは西コースが改修を施されており、路面がとてもアグレッシブになっているようです。先日行われたGTAのテストは残念ながら雨だったので、ドライコンディションでの確認はとれていないのですが、レースは例年以上にタイヤに厳しい展開になるだろうと予想しています。

鈴鹿サーキットについてもう少し細かく見ていくと、実は距離が長い割りにはテクニカルな要素も強く、国内屈指のテクニカルコースであると表現できるでしょう。タイヤにとっては、あらゆる特性が高次元にバランスしていることが求められます。
コースを3つに区切ったセクター(区間)タイムが表示されますが、その中に“苦手区間”を作らないことが、タイヤ開発のポイントになりますね。

季節的にも真夏ですし、日中の路面温度が高い時間帯の走行が増えることから、それに耐えうるコンパウンドの開発がとても大事な要素になってきます。その結果として、繰り返しになる部分もありますが、GT500/GT300ともに、1,000kmをきっちり走りきることが重要になりますから、安定したタイムで必要な距離を走りきるという高次元の耐久性がタイヤには求められるわけです。

世界的にタイヤワンメイク化を図るカテゴリーが増えている中、国内外のタイヤメーカー5社がしのぎを削りあっているSUPER GTは、世界中を見渡してもほかに類を見ない“タイヤ激戦区”です。また、参加車種もバラエティに富んでおり、車両の側でも激しい開発競争が行われています。こうした厳しい競争環境の中での開発は当然厳しいものがありますし、難しい側面も持っています。

私事ですが、2000年から2002年までGT担当として激動の3年間を過ごしていました。その後は他の部署に移っていたのですが、今年の1月に再びGTの開発担当を命ぜられて戻ってきました。
厳しい競争環境であることは以前も現在も変わりません。開発、つまりは新しいものを生み出していく仕事ですから、「いつも通り」は通用しないわけです。常にイバラの道を突き進んでいくといった感じでもありますから、開発にまつわる思い出話やエピソードは数えきれないくらいに発生しています。もっとも、それぞれがとても記憶に残るものではあるのですが、それはまた機会があればご紹介していきたいと思います。


■使用するタイヤサイズ
  (GT500) 330/710R18、330/710R17
  (GT300) 280/650R18、280/680R18、280/710R18、300/650R18、300/680R18、330/680R18、330/710R18、330/710R19
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