今回の鈴鹿は1000kmの長丁場であるがゆえ、トラブル無く完走することが最も重要になります。チームによっては3人目のドライバーを登録しているところがあったり、ピットインやタイヤ交換のタイミングなど、様々な作戦を組み立ててレースに臨むものと思われます。
そんな中でタイヤとしては、こうした様々な作戦に対応できる“懐の深いタイヤ”を準備したいと考えています。
また、今年のマシンはGT500/GT300ともに、大幅なパワーアップが図られています。コースについても鈴鹿サーキットは西コースが改修を施されており、路面がとてもアグレッシブになっているようです。先日行われたGTAのテストは残念ながら雨だったので、ドライコンディションでの確認はとれていないのですが、レースは例年以上にタイヤに厳しい展開になるだろうと予想しています。
鈴鹿サーキットについてもう少し細かく見ていくと、実は距離が長い割りにはテクニカルな要素も強く、国内屈指のテクニカルコースであると表現できるでしょう。タイヤにとっては、あらゆる特性が高次元にバランスしていることが求められます。
コースを3つに区切ったセクター(区間)タイムが表示されますが、その中に“苦手区間”を作らないことが、タイヤ開発のポイントになりますね。
季節的にも真夏ですし、日中の路面温度が高い時間帯の走行が増えることから、それに耐えうるコンパウンドの開発がとても大事な要素になってきます。その結果として、繰り返しになる部分もありますが、GT500/GT300ともに、1,000kmをきっちり走りきることが重要になりますから、安定したタイムで必要な距離を走りきるという高次元の耐久性がタイヤには求められるわけです。
世界的にタイヤワンメイク化を図るカテゴリーが増えている中、国内外のタイヤメーカー5社がしのぎを削りあっているSUPER
GTは、世界中を見渡してもほかに類を見ない“タイヤ激戦区”です。また、参加車種もバラエティに富んでおり、車両の側でも激しい開発競争が行われています。こうした厳しい競争環境の中での開発は当然厳しいものがありますし、難しい側面も持っています。
私事ですが、2000年から2002年までGT担当として激動の3年間を過ごしていました。その後は他の部署に移っていたのですが、今年の1月に再びGTの開発担当を命ぜられて戻ってきました。
厳しい競争環境であることは以前も現在も変わりません。開発、つまりは新しいものを生み出していく仕事ですから、「いつも通り」は通用しないわけです。常にイバラの道を突き進んでいくといった感じでもありますから、開発にまつわる思い出話やエピソードは数えきれないくらいに発生しています。もっとも、それぞれがとても記憶に残るものではあるのですが、それはまた機会があればご紹介していきたいと思います。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 280/650R18、280/680R18、280/710R18、300/650R18、300/680R18、330/680R18、330/710R18、330/710R19