富士スピードウェイは皆さんご承知の通り、全体的には高速型のサーキットに分類できます。特に1.4kmを超える長いホームストレートが特徴であり、ストレートでのトップスピードが重要になりますので、各マシンも他のコースに比べて相対的に低いダウンフォースでスピードを稼ぐセットアップとなってきます。
このため、逆にコース終盤のセクター3に代表される低速コーナー区間では、タイヤについてはメカニカルグリップの確保と500kmの長丁場を戦い抜くための耐久性、もう少し細かく言えば最後まで安定したパフォーマンスを示す持続性とを、高い次元で両立することが重要であると考えています。
そんな中、まずGT500クラスについてですが、24号車のGT-R、19号車のSC430ともに、タイヤとしては昨年から開発の方向性に大きな変更点はありません。ですが、もちろん昨年の経験を基に開発方向の絞り込みや見極めは出来ており、大きなレベルアップを果たしているものと思っています。
その上で今年は予選や持ち込みタイヤ本数に関する規則が変更となっていますので、グリップ性能と耐久・持続性能の両立が、より重要になったと言えるのではないでしょうか。
またGT300クラスの速度域が向上したことで、GT500車両はストレートでのアドバンテージが減っているという側面があります。これによりパッシングのためにコーナーリングでの負荷が増えるという状況も予想されますが、タイヤ開発そのものへの影響は少ないと思います。
もっとも、ドライバーさんにとってはパッシングによるタイムロスの影響を最小限とするための走りやレースの組み立てが求められるわけで、仕事量が増えて大変になったかと思います。観戦する上では見どころのひとつにもなるでしょうね。
GT300クラスについては速度域がアップしたことで、富士に限らず全般的にタイヤへの負荷は大きくなっていると思います。そのために、今まで以上にタイヤには耐久性や持続性の確保が必要とされており、よりタフなタイヤが求められていると考えています。
また、新しい車種が増えていることは大いにレースを盛り上げる上でも魅力的なポイントっですが、タイヤ開発者として見たときには1サイズ・1コンストラクションとした中で、様々な個性や特性を持つ多くの車種に対応しなければなりません。これは、本音で言えば本当に開発は大変なんです(笑)。
もちろん、それだけにやり甲斐もある仕事ですから、シーズンを通じて足踏みすることなく、常にタイヤを進化させていく考えでいます。
さて、最後にお天気のことにも触れておきたいと思います。
昨年来、レースウィークに天候が安定しないケースも多々あるのですが、ヨコハマタイヤのADVANレーシングタイヤは多少の雨量変化には「へこたれない」という強みがあるかと思います。決勝レース中に路面コンディションがドライからウェットに転じたり、その逆に変化したような場合は、タイミングやタイヤ選択で運・不運という要素に左右されることもありますが、雨量の変化に対する許容範囲は広いのではないかと思っています。
もちろん気持ちよい天候の中でレース観戦を出来れば最高ですが、仮に雨が降ってしまってウェットレースになったとしても、雨の降り方の変化などによって各車の走りがどう変わるのか、それとも変わらず安定したラップを刻むのか、といった点にも注目してみると、より面白いのではないでしょうか。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 280/650R18、280/680R18、280/710R18、300/650R18、300/680R18、330/710R18、330/710R19