開幕戦の舞台となる岡山国際サーキットは、グレーニングと呼ばれるタイヤの表面に波を売ったような摩耗が出やすいコースで、摩耗とグリップというふたつの性能が高い次元で両立していることを求められます。
また、3月末の開催ということで季節の変わり目にあたるため、事前に気温や路面温度を予測するのも難しく、持ち込むタイヤの選定に悩むことになるレースでもあります。
昨年に引き続きGT-RとSC430の2台がヨコハマタイヤを装着するGT500クラスですが、タイヤ開発の基本的な方向や課題は替わっていません。ただ、予選に関する部分や持ち込めるタイヤ本数などの規則が変更となったこともあり、グリップと耐久性(持続性)の両立が、より重要になったと考えています。
GT500についてもう少し言えば、GT-Rは昨年同様に安田裕信選手とビヨン・ビルドハイム選手のコンビであるのに対して、SC430は荒聖治選手と新たに加入するアンドレ・クート選手のコンビになりました。
ドライビングスタイルは選手毎の特徴がありますが、両チームともにパートナー同士でタイヤの評価は共通しているので、開発の課題は見極めやすいと感じています。ただし。マシンやタイヤの挙動を表現する時に使う単語が同じでも、実はそれぞれが異なる挙動を表現している場合がありますので、この点は注意しながらコミュニケーションを深めています。
一方でGT300は今年も多くのマシンがヨコハマタイヤを装着しての参戦ですが、FIA GT3車両が台数を拡大しています。
タイヤから見た場合、FIA GT3とJAF-GT車両の両方に対して基本設計は同一で、1サイズ・1スペックとした高い汎用性を持ったタイヤ開発を目指しています。しかし、FIA
GT3は規則によりタイヤサイズがシーズンを通じて固定であるのに対して、JAF車両は車両特性に合わせたサイズの設定が決められた上限までの範囲内で可能という違いがあります。
今年のGT300は車種のバラエティが増えて、リストリクター規制が無くなったFIA
GT3とJAG-GT車両のガチンコ対決は、私も一人のモータースポーツファンとして本当に楽しみにしているところです。
しかしタイヤ開発側の一人としては、前述のように1サイズ・1スペックとした高い汎用性を目指していますので、シーズンを通じて気を抜けない開発が続くことになるだろうとも思っています。
また、ニューフェイスという点ではハイブリッド・レーシングカーの登場も、注目を集める存在になるでしょう。開幕前の公式テストが実質的なシェイクダウンとなっていますが、タイヤ開発における課題が明確になるのもこれからでしょう。車両重量や出力特性から来るタイヤへの負荷や摩耗特性の違いなどが、新たに課題となる可能性があると考えています。
オフシーズンは岡山国際サーキットでのテストも実施しており、まずは開幕戦での大量ポイント獲得をしっかりサポートしたいと思っています。
その上でGT500については最終戦までしっかりチャンピオン争いに加われること、GT300は全戦優勝とチャンピオンの連取を目標として、ユーザーチームをサポートしていきます。
■使用するタイヤサイズ
(GT500) 330/710R18、330/710R17
(GT300) 280/650R18、280/680R18、280/710R18、300/650R18、300/680R18、330/710R18、330/710R19