世界各地を転戦するWRC(FIA世界ラリー選手権)を頂点とするラリー界のピラミッドにおいて、その下に位置するのがFIAのエリア選手権シリーズ。
中東、アフリカ、ヨーロッパ、そしてアジア-パシフィックと4つのシリーズが設定されており、その名の通りアジア・環太平洋地域を転戦するのがAPRC(FIAアジア-パシフィック・ラリー選手権)、通称“アジパシ”だ。
発足は1988年、初代チャンピオンに輝いたのはADVANラリータイヤを装着するギャランVR-4を駆った篠塚建次郎選手だった。
2012年は全6戦のカレンダーで、アジア地区が日本を含む3戦、環太平洋(オセアニア)地区が3戦となっている。APRCの選手権は全6戦が対象となるが、このほかに各地区ごとの3大会ずつを対象とするアジア・カップとパシフィック・カップも設定。
さらにニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、日本の4大会で競われるジュニアカップは、28歳以下の若手ドライバーが対象(2012年1月1日現在の満年齢)。排気量1,600ccまでの2輪駆動で参戦することも条件となるが、2011年に設立されたこのクラスで初代ジュニアカップ・チャンピオンの称号を獲得したのが、日本から参戦する番場彬選手。
ディフェンディングチャンピオンとして迎える2012年シーズンは引き続きプロトン・サトリアネオを駆るが、チームはPROTON R3 CUSCO RALLY TEAMからの参戦となり、メーカーワークスに近い立場から連覇を狙うこととなる。
シリーズは前述の通り、個性的なステージが用意される6大会。土地柄を反映した大会は、難攻不落のステージが続くことも多い。例えば灼熱のプランテーションを駆け抜けるマレーシア、路面状態の見極めも難しい中国。アウトバンクのハイスピードコーナーも多いオーストラリアと、その舞台は過酷な大自然を相手にする。
そんな戦いの舞台に名を連ねるクルーのレベルは、世界的に見ても決して侮れない。2011年に番場選手を抑えて2WDカップのタイトルを獲得したカラムジット・シン選手はP-WRC(FIAプロダクションカー世界ラリー選手権)の初代チャンピオン。
少数精鋭による激しい戦いが演じられている舞台、それが“アジパシ”ことFIAアジア-パシフィック・ラリー選手権である。