2005年の発足から7シーズン目を迎えているWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)も、いよいよこの週末に開催されるマカオ・グランプリで最終戦を迎える。発足から最終戦の舞台として用意され続けているマカオだが、2006年にADVANがワンメイクコントロールタイヤとなって以降は、併催されるF3インターコンチネンタルカップもADVANワンメイクであることから、まさにレースウィークのマカオはADVAN一色に染まることになる。
最終戦の注目ポイントは、何といってもドライバーズチャンピオンの行方に尽きる。前戦・上海天馬ラウンドを終えて、ランキングはトップをイヴァン・ミューラー選手が守り400点の大台に乗せた。一方で追うロブ・ハフ選手は380点としており、両者の差は20点。3番手のアラン・メニュ選手は323点となりミューラー選手との差が77点と開いているため、チャンピオンの権利はトップの2人に絞られたことになる。
マカオでのストリート・バトルは、アクシデントも多く何が起こるか全く予想もつかない。その上、コース全長こそシリーズ最長となるものの、狭くテクニカルな山側区間が多くを占めることから、パッシングの機会は非常に限られるタフなレースとなる。
そこで、前戦・上海天馬のプレビューと同様に、過去のデータを紐解いて勝者の予想を立ててみよう。予想にあたってのポイントは、やはり市街地を舞台にしたストリート・バトルであることから結論を導いてみたい。
まず、過去のマカオ戦について見ると、昨年と一昨年の第1レース、さらに2008年の第2レースとハフ選手はこれまでに3勝を挙げている。対するミューラー選手、これが意外なことにシボレー移籍後はもちろん、セアト時代を含めて優勝した経験が無いという事実が見えてくる。
さらに視野を拡げて、市街地コースに強いのは誰なのか、という点についても検証してみよう。
2005年のシリーズ発足から先の上海天馬戦までの間で、WTCCは全152戦が開催された。このうち、マカオを含めた市街地コースを舞台にしたレースは28戦が行われている。
市街地コースでの戦い、そこで最も優勝を獲得している人は、ともに6勝を挙げているメニュ選手とハフ選手。5勝で続くのはBMWを駆っていたアンディ・プリオール選手とアウグスト・ファルファス選手、残念ながら両者は既にWTCCの舞台から去ってしまっている。この4人に続くのは2勝のガブリエレ・タルクィーニ選手となるので、現役勢ではメニュ選手とハフ選手が圧倒的に市街地を得意としていることがわかる。
こうなると、チャンピオン争いは現在のところ2番手で追う立場にあるハフ選手に有利、という結論がデータからは導かれることになる。そこでもうひとつ、市街地ならではの特徴であるパッシングの困難さに注目してみたい。
決勝でのパッシングが困難、ということは予選のポジションが重要になるということだ。この点についてもデータでは数字で明確に現れており、一般的なサーキットコースでのポール・トゥ・ウィン率が43.5%であるのに対して、市街地コースは64.28%と高くなっている。
更に細かく見ると、第1レースのポール・トゥ・ウィン率は市街地の場合で実に85.7%。第2レースではそれよりも低くはなるが、それでも42.8%という数字が計算の結果となっているのだ。
つまり、まずは予選で誰がポールポジションを獲得するのかが大きな注目点となる。では、ポールポジション(非リバースグリッド)をこれまで最も多く獲得している選手は誰なのか。
それはずばり、タルクィーニ選手で13回。これに続くのはファルファス選手、そしてミューラー選手とメニュ選手が11回で並んでいるのだ。これを2011年、今シーズンに絞ってみても、メニュ選手とミューラー選手が4回ずつ、ハフ選手が3回で続いている。そう、今年はシボレー勢が予選トップタイムを開幕から独占し続けてきているのだ。
注目の予選、まずは1回目が行われたが、ここでシボレーのメニュ選手が13位に沈んで予選2回目への進出を果たせないという意外な展開となる。一方でダリル・オーヤン選手やアンドレ・クート選手といった地元勢は速さを見せて、トップ10に食い込んで予選2回目に勝ち進んだ。
そして日本時間の18日・17時03分からスタートした予選2回目。現地のコンディションは曇り/ドライだが、開始5分ほどでボルボのロバート・ダールグレン選手がクラッシュ。マシンのフロントを大破し、コース上にはオイルが出てしまった。この処理のために赤旗が提示され、予選2回目は長い中断に入ってしまう。
37分の中断を経て予選は再開、ここからは残り時間の10分ではなく、15分のフルタイムで走行することになった。そして注目の結果だが、トップタイムをマークしたのはハフ選手、2番手で続いたミューラー選手とは0.268秒という僅差でのポールポジション獲得となった。
ミューラー選手が2年連続3回目のタイトルを手中におさめて黄金時代を磐石なものとしていくのか。それともWTCC発足初年度からシボレー一筋にステアリングを握り続けてきたハフ選手が、悲願の世界チャンピオン獲得を実現するのか。
ランキング上位陣の得点差が小さく、大接戦となっているYOKOHAMAトロフィーの行方とあわせて、絶対に今年の最終戦・マカオからは目を離せない展開となりそうだ。