2005年に発足したWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。F1などと並ぶ4大FIA世界選手権カテゴリーのひとつであり、ツーリングカーによるスプリントレースの最高峰に位置づけられている。
1大会に約50km、およそ30分の決勝を2レースを行うフォーマットを採用、2011年は12大会/24戦のカレンダーが組まれている。ただ、開幕直前になってモロッコ戦のキャンセルが決まり、2011年3月18日の時点では代替大会をヨーロッパで開催するべく調整中となっている。
モロッコのキャンセルによりアフリカ大陸でのレースは消滅したが、南米、ヨーロッパ、アジアと戦いの舞台は世界規模。日本には2008年に初上陸を果たし、3年にわたって岡山国際サーキットで開催されてきたことから、多くのファンがWTCCの魅力を肌で感じることになった。2011年は舞台が鈴鹿サーキット(東コース)に移り、新たなステージでの戦いぶりにも期待が高まっている。
日本でもファンが急増しているWTCCは、「サーキットの格闘技」という異名も持っているように、スタートからフィニッシュまで息つく間も無く激しいバトルが繰り広げられることが最大の魅力。
多少の接触は当たり前、ただし闇雲にプッシングが行われるわけではなく、そこは世界選手権のタイトルに相応しいトップドライバー達の素晴らしいテクニックの応酬を楽しむことが出来る。ルールやマナーをしっかり守りつつ、常に攻めの姿勢で戦いに挑むドライバーたちの妙技を間近に出来ることこそが、WTCCの魅力と言っても良いだろう。
そんなWTCCの楽しさを実現している背景には、スポーツとしてのエンターテイメント性もしっかり考慮された規則がある。
ひとつは「リバースグリッド・システム」。従来から決勝第2レースのスターティンググリッドを決するために採用されてきたシステムだが、2011年はこれまでとは異なるかたちで運用されることとなった。
昨年までは決勝第1レースの結果に基づいて、上位8台をリバースグリッドとして第2レースのスターティンググリッドに配していた。しかし、この方式では第2レースの上位グリッドを獲得するために第1レースで故意の順位操作を行うことも可能性としては存在していた。
そこで2011年からは、2回行われる公式予選のうち1回目の結果の上位10台について、決勝第2レースにリバースでスターティンググリッドに配する方式に改められた。
WTCCの予選は1回目に全車が出走し、上位10台が2回目の予選に進出できる。そして2回目の結果を受けて決勝第1レースのスターティンググリッドをポールポジションから10番手まで決し、その後方に1回目予選結果の11番手以降を配していく。
つまり1回目の予選は2回目への進出を賭けてもいるため、ここで決勝第2レースの上位グリッドだけを狙うことは非常に困難になるのだ。