前戦・スペインのヴァレンシア戦からおよそ一カ月半。いよいよ2011年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)もシーズン終盤戦に突入、ヨーロッパから遠く海を渡ってアジアラウンドへと突入する。その初戦となるのが、4回目となる日本ラウンド。WTCCの認知度も高まりファンも増えている中、これまでの岡山国際サーキットに替わって、戦いの舞台は鈴鹿サーキットの東コースとなる。
日本ラウンドについては「FIA WTCC Race of JAPAN 特集企画」に詳しいが、全長約2.2kmの東コースを23周で競われる。鈴鹿サーキットではF1を除くと1989年のスポーツカー世界選手権以来で実に22年ぶり。
東コースでのビッグレースと言えば'90年代に行われたJTCC(全日本ツーリングカー選手権)以来となり、果たしてどのような熱いバトルが演じられるのか楽しみなところである。
さて、アジアへと上陸するWTCCだが、終盤戦ということで気になるのはタイトルの行方。
既にマニュファクチャラー・チャンピオンは2年連続でシボレーの獲得が確定しているが、ドライバーのチャンピオン争いは熾烈を極めている。
1大会で2レースを戦うWTCC、おさらいすると選手権ポイントは優勝者に25点が与えられる。つまり2レースを連勝すれば50点が加わり、日本、中国(上海)、マカオと3大会/6レースが残っているので、6連勝による最大獲得点数は150点ということになる。
そこでランキングに目を転じて見ると、前戦・ヴァレンシアで2連勝を飾ったシボレーのイヴァン・ミューラー選手がポイントを333点として、317点となったチームメイトのロブ・ハフ選手を逆転してトップに立っている。そして3番手につけるのも、やはりシボレーのアラン・メニュ選手でこちらは253点となっている。
他陣営ではBMWのトム・コロネル選手が4番手で158点、セアトのガブリエレ・タルクィーニ選手が5番手で157点。そう、ミューラー選手との点差はコロネル選手が175点、タルクィーニ選手は176点と開いているため、既にタイトルの可能性は消失しているのだ。つまり、今年のドライバーズ・タイトルはシボレーの三選手に獲得の権利が既に絞られており、更に言えば若干点差が開いているメニュ選手はやや厳しい立場であると言える。
事実上はミューラー選手とハフ選手の一騎討ち状態になるわけだが、両者は激しい接近戦を最近になって頻繁に演じており、タイトル争いはヒートアップを続けている。チームとしてはあくまでも平等に三選手を扱い完璧な状態のマシンを提供しているというが、ラフプレーだけはしないようにと強く言っているとのこと。果たして、鈴鹿を終えて両者のランキングと得点がどのようになっているのかが気になるところだ。
一方、YOKOHAMAトロフィーは上位陣が入り乱れての大接戦状態。ヴァレンシアで2レースをともに制したクリスチャン・ポールセン選手がポイントを99に伸ばして、久しぶりにランキングリーザーの座を奪還。2番手のノルベルト・ミケリス選手に4点差をつけている。以下、51点で7番手としているペペ・オリオラ選手までの7選手が50点差以内にひしめきあっているが、まだまだタイトルの行方を占うのは難しい。
なぜならYOKOHAMAトロフィーは独特の得点システムを採用しており、通常の大会は1戦につき優勝者に10点が与えられるが、最終戦のマカオに関してのみは2レースそれぞれで優勝得点が20と倍増されているのだ。
つまり鈴鹿と中国・上海の4レースで最大40点、さらにマカオの2レースでも最大40点、可能性は低いにしても6連勝を飾れば80点を獲得出来ることになる。計算上はランキングに名を連ねる大半の選手に勝負権は残されていることになるが、上位陣だけを見ても現時点における得点差は大きいように見えて決して余裕を生んでいる訳ではないことに気づく。
ましてや、ボーナスポイントとなる最終戦のマカオはアクシデント発生が必須とも言えるタフなレース。タイトル争いの最終決戦は一方が優勝でライバルはリタイア、ゆえに大逆転というケースも決して珍しくないのだ。
このように選手権もYOKOHAMAトロフィーも佳境に入りつつある2011年のタイトル争い。終盤のアジア・ラウンド、その皮切りとなる鈴鹿・東コースでの戦いは、全てのドライバーとチームにとって重要な一戦と位置づけられていることに間違いは無い。