例年通り、8月は夏休みということでレースの開催がなかったWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。カレンダーが9月に変わるとシーズンも再び始動、この週末にはスペインのヴァレンシア・サーキットで第17戦と第18戦が開催される。
今季のWTCCは12大会/24戦のカレンダー。既にそのうちの序盤戦と中盤戦にあたる3分の2を消化しており、シーズンは終盤の4大会を迎えることになる。そして、後半は3大会がアジアを舞台にして開催される。10月、今年は鈴鹿サーキットに舞台を移した日本ラウンド、11月に入ると初開催となる中国本土での大会を行い、そして最終戦は恒例のマカオにおけるストリート・バトルという流れだ。
この終盤4大会だが、鈴鹿と中国の広東はWTCCにとって初開催となるコース。ともに金曜日から走行セッションは用意されているものの、どのチームもデータが全くない手さぐり状態からのスタートとなることは間違いない。
そうなると今週のスペインラウンドは各チーム、そしてドライバーにとって、より重要な一戦となるはずだ。2005年のWTCC発足から毎年開催が続けられているスペインは、データも豊富であらゆるシチュエーションに迷わず対応出来る体制が各チームで整えられているはずなのだから。
未知の戦いとなる日本と中国本土でのレースを前に、ヨーロッパラウンドの締めくくりとなるスペインでしっかり成績を残して、激しさを増すランキング争いでも有利な立場でアジアラウンドに臨みたいという思いは誰しもに共通の思いだろう。その中であえて注目したいのがセアト勢、そのエースであるガブリエレ・タルクィーニ選手だ。
ご存じの通り、セアトはスペインの自動車メーカー。以前のようにメーカー自体が本格的に参画しているスタイルではなくなっているものの、やはり地元での優勝を願うファンの声援は一際大きいだろうし、チームやドライバーも地元での勝利に賭ける思いというのは強いはずだ。
しかし今シーズンはシボレーの速さが目立っており、セアトは第4戦のベルギーで一勝を挙げたにすぎない。シボレー勢の3選手に続くランキング4番手につけているタルクィーニ選手であるが、トップのロブ・ハフ選手とはダブルスコアに近い点差となっており、タイトル争いは非常に厳しい状況にある。
だが、そんな厳しい状況にあるからこそ、狡猾なベテラン・ドライバーの奮起に期待したいところだ。車両についても一時代を築き上げタイトルも獲得したディーゼルターボエンジンから、新j規定の1,600ccガソリンターボエンジンに換装されており、このニューエンジンでの初勝利も待ち遠しいところ。
前戦・ドイツで、タルクィーニ選手はしっかりと2戦連続で3位表彰台を獲得しており、新しいエンジンの安定感やパフォーマンスの向上も確実に成績に反映されてきている。
ヴァレンシアは他のコースと比べて、車種による得意・不得意が存在しないコース。過去の戦績を見ても、セアトが4勝、BMWとアルファロメオがそれぞれ3勝、そしてシボレーは2勝と勝ち星を分け合ってきている。
果たしてスペインのセアト・ファンたちが送る大きな声援が、タルクィーニ選手をはじめとしたセアト勢の走りを強く後押しする結果となるのか、この週末はぜひその戦いぶりに注目したいところだ。