昨シーズンは夏休み明け最初のレースとして9月初旬に開催されたドイツ・ラウンドだが、今シーズンは夏休み前の最終レースとして7月末のカレンダーに組み入れられている。舞台となるのはオッシャーズレーベン・モータースポーツアリーナ。
WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)が発足した2005年から、7年連続で開催されているサーキット。昨年のオッシャーズレーベン戦プレビュー記事でも解説したように、このコースはBMWが圧倒的に得意としていることが最大の特徴である。
改めて戦歴をひもといてみると、2005年から2010年までの6シーズン、12戦のうち10戦でBMWが優勝を飾っている。その勝率は実に83.3%なのだから、「圧倒的に得意としている地元のコース」という表現が最適と言えるだろう。
だが、今年は少しばかり状況が異なってきている。BMWが残念ながらメーカーとしてのWTCC活動を休止したことから、YOKOHAMAトロフィー扱いではなく参戦しているのはROAL
Motorsportのトム・コロネル選手のみとなっている。BMWもセアトもメーカー本体の強力なバックアップ体制ではない現在、本格的なメーカー・ワークス体制で参戦しているシボレーとの差は拡がりつつあるのが正直な現状だ。
昨年、久しぶりにオッシャーズレーベンでBMWから勝利を奪い、同地での初優勝を飾ったシボレー。ドライバーはアラン・メニュ選手だったが、この時の第1レースと第2レースでともにイヴァン・ミューラー選手が3位表彰台を獲得している点にも注目したい。
では今年のランキングトップに立っているロブ・ハフ選手はどうだったのかというと、第1レースは序盤でトップに立ったものの、スタート直後の混乱中に生じた接触の責任を問われてペナルティを受け、第1レースは18位に沈んでいる。
ここオッシャーズレーベン戦は、スタート直後の第1コーナーでアクシデントが多発する傾向にあり、2007年にはセーフティカーが導入されるなど毎年必ずといって良いほどに“荒れたスタート”となっている。そんな荒れたレースで勝つための最善策は何かと言えば、それは予選でポールポジションを獲得することに他ならないと言えるだろう。
第1レース(第15戦)のグリッドを決する予選総合順位はもちろん、スタンディング方式となる第2レース(第16戦)のグリッドを決する予選1回目の結果(上位10台をリバースグリッドで第2レースのスタートに配置)にも注目だ。
選手権争いと同様、いや、それ以上に白熱していると言っても過言ではないのが、今シーズンのYOKOHAMAトロフィー争い。
前戦・イギリスでは、ベテランのフランツ・エングストラー選手が2レースをともに制し、さらに自身最上位の総合3位表彰台獲得という活躍を見せた。この結果、トップと27点差の6位だったランキングは、10点差の4位にジャンプアップ。ノルベルト・ミケリス選手やクリスチャン・ポールセン選手が奮わなかったため、トロフィー争いは一気に接戦模様が色濃くなってきた。
そんな中、ドイツ戦のレースウィークに入った7月25日の月曜日、エングストラー選手は50歳の誕生日を迎えた。
WTCCの公式サイト(英語版)には、幼少の頃にペダル・カーを操るエングストラー選手の写真が掲載されているが、果たしてこの週末に“遅れてきた最高のバースディ・プレゼント”がオッシャーズレーベンの表彰台で手渡されることになるのか、今回の戦いぶりも要注目だ。