WTCC史上3人目となる1大会2レース制覇をロブ・ハフ選手がなし遂げた、前戦・イタリア大会(モンツァ)。ハフ選手は予選でも開幕からQ2(予選2回目)のトップを独占する速さで、第1レースのポールポジションはいまや指定席となりつつある。
一発の速さが求められる予選、そして駆け引きの巧さも必要となる決勝。まさにハフ選手は完勝をモンツァで飾り、ハフ選手は6戦中4勝、シボレーは6戦中5勝という圧倒的な強さを見せている。
そして次なるWTCCの舞台はハンガリーのハンガロリンク。当初はモロッコでのストリートレースが予定されていたが、キャンセルされたことから代替地としてWTCCが初めて開催される運びとなった。
この“初開催”というのは、ひとつの重要なキーワードになる。
当然だがハンガロリンクについてのデータは、どのチームも持ち合わせていない。もっとも今季からエンジンを1,600ccガソリンターボに替えているチームにとっては全てのコースで完全なデータが無いともいえるが、やはり初開催ということで手さぐりにならざるを得ない部分があることも事実だろう。
そこでハンガロリンクのコースについてそのプロフィールを確認すると、テクニカルな低速レイアウトであることと、アップダウンの大きいコースであるという特徴を見いだすことが出来る。
テクニカルコースとなると一般論で言えば得意とするのはFR(後輪駆動)のBMW勢。しかし、シボレーもラセッティの時代は「曲がりにくいクルマ」ということで特異なセッティングを要していたが、クルーズになってコーナーリング性能も格段に向上している。
またアップダウンがあり、かつブレーキングと加速が連続するというレイアウトは、以前ならディーゼルターボエンジンのセアト勢が得意とするところだったが、今やクルーズやBMW320TCがガソリンターボエンジンとなったので、大きなアドバンテージを得ているとも言い難い。
そうなるとシボレー勢の勢いが留まることは無さそうにも見えるが、もう一つの要素として補正(カンペンセイト)ウェイトがある。前戦に続いて今回もその重量は変わらず、クルーズにのみプラス40kgと発表された。
モンツァではプラス40kgの重さを感じさせない快勝を飾ったシボレーだが、あちらはWTCC屈指の高速型コースで元々クルーズが得意とするシチュエーション。対してハンガロリンクは低速型でアップダウンのあるコース、果たして今回はこの40kgがどのように作用するのか気になるところだ。
ところでハンガロリンクと言えば、東ヨーロッパでは初のF1グランプリが1986年に開催されたことでも知られている。
WTCCには元F1パイロットという経歴の持ち主も多いが、その中で注目なのがセアトのガブリエレ・タルクィーニ選手。1992年のハンガリー・グランプリにフォンドメタル・フォードで参戦しており、予選では30台中12番手のタイムをマークしている。決勝レースは残念ながらオープニングラップの多重クラッシュによりリタイアとなっているが、WTCCドライバーとしてタルクィーニ選手がどのような戦いぶりを演じてくれるのかも楽しみなところである。
最後にもうひとつの見どころとして、YOKOHAMAトロフィーの展開を見てみよう。
3大会/6戦を終えた時点でのランキングトップはBMWのクリスチャン・ポールセン選手。ここまでの3大会でそれぞれ1勝を挙げ、ベルギーの第2レース(第4戦)こそリタイアを喫したものの、安定感のある戦いぶりで45ポイントを獲得している。
これを追う2番手は3選手が同ポイントとなっており、BMWのノルベルト・ミケリス選手、シボレーのダリル・オーヤン選手、BMWのハビエル・ヴィラ・ガルシア選手が、それぞれ33ポイントを獲得している。
このなかで2選手のトピックスを紹介を紹介しよう。
まずミケリス選手だが、彼が駆るBMWは昨年までマニュファクチャラー登録されていたアウグスト・ファルファス選手が使っていたマシンなのだ。もちろん今季の車両規定に合わせて1,600ccターボエンジンに換装するなどの変更は施されているが、マシンはまさに“血統書つき”と言えるだろう。
もう一人、ガルシア選手(写真)は23歳という若きスペイン人ドライバー。1999年にスペイン国内のカートレースに出場、2004年にはスペインのF3にステップアップし、デビューイヤーで1勝を挙げている。その後はF1のテストドライバーも経験しつつ、GP2で実績を重ねて、今季WTCCへのデビューを果たした。この注目のルーキーが、これからどのような飛躍を見せてくれるのか、期待したい。