2011年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)はこの週末、ブラジルのクリティバ・サーキットで開幕を迎える。当初はインテルラゴスでの開催が計画されたこともあったが、最終的には2007年から開幕戦の舞台として定着しているクリティバで今年もシーズンはスタートを切ることになった。
発表された参加台数は、ディフェンディングチャンピオンの証であるゼッケン1をつけるシボレーのイヴァン・ミューラー選手を筆頭に、20台。
今季はシボレー・ヨーロッパ、BMWカスタマーレーシングチームズ、SRカスタマーレーシング(セアト)、ボルボ・ポーラスター・エバリュエーション・チームの4ブランドがマニュファクチャラー登録を行っているが、まず注目は初めてシーズンフル参戦を果たすボルボの戦いぶりについてであろう。
マシンについては新しい規定に沿った排気量1,600のガソリンターボエンジン車が主流になる。シボレー・クルーズは4台全てが新規定車両になり、BMWも大半がこの規定に沿ったものとなった。ただし従来の2,000ccノンターボガソリンエンジンやディーゼルターボエンジン車も参加は可能で、セアトは全車がディーゼルターボ車となっている。
開幕戦ではこれらのマシンが補正ウェイトなどの影響を受けずにガチンコレースを展開する。つまりシーズンの行方を占う上で重要になってくる、新規定車両のパフォーマンスにまずは注目が集まることになる。
レースのフォーマットについては基本的に従来と同じだが、2011年からの変更点としてリバースグリッドシステムがある。これまでは第1レースの上位8台に対して適用されて第2レースに臨んでいたが、これが今シーズンは予選1回目の上位10台に適用される。第2レースの上位グリッドを狙った、第1レースにおける故意の順位操作を回避するための措置だが、これによって第2レースのスタートから序盤では激しいパッシング合戦が展開されることも予想される。
近年のクリティバでの戦いを振り返ると、ここ3年はイヴァン・ミューラー選手とガブリエレ・タルクィーニ選手が優勝を二分する強さを見せている。さらに細かく見ると、ローリングスタートの第1レースはミューラー選手、スタンディングスタートの第2レースはタルクィーニ選手が勝利しているのだ。
マシンで言えば、昨年の第1レースはミューラー選手がシボレーに移籍しての初優勝であったが、それ以外の5勝は全てセアトのディーゼルターボが独占している。圧倒的にセアトが強い一戦と言えるだろうが、前述のように今季から登場する1,600ccガソリンターボエンジン車が連勝を阻止することになるのか注目だ。
さて、最後に日本のWTCCファンにとって嬉しいニュースを紹介しておこう。
既にメディアでも報じられているが、岡山国際サーキットで開催された昨年の「WTCC
Race of JAPAN」で日本人として初めてYOKOHAMAインディペンデント・トロフィーを制した谷口行規選手が、今季は年間エントリーを行って本格的に参戦する。
チームはバンブー・レーシングで、昨年もパートナーだったダリル・オーヤンとともに、まずはシボレー・ラセッティでブラジルに参戦。昨年の岡山では雨が降りしきる難しいコンディションの中で見事な優勝を飾っているだけに、その活躍には期待が高まるところだ。