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世界最高峰のツーリングカー・スプリントレースであるWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、今年もブラジルで開幕。クリティバ・サーキットを舞台に20台のマシンが熱い戦いを演じてくれた。
2011年、もっとも大きな規則の改定が新しいエンジンへの移行である。排気量1,600ccの直噴ガソリンターボエンジンはWRC(FIA世界ラリー選手権)とも共通の規定によるもので、シボレーとBMWは新エンジンに対応したマシンを送り込んできた。
一方で従来の排気量2,000ccのノンターボガソリンエンジン、およびディーゼルターボエンジンについても引き続き参戦が認められている。つまりFIA
SUPER 2000の規定による車両が全て出場出来ることになり、開幕戦についてはこの3種類のエンジンを搭載するマシンが全て集まることとなった。
土曜日に行う公式予選、フォーマットは昨年同様に1回目で10番手までに入ったドライバーが2回目に進出して再びタイムアタックを行い、最終的な決勝第1レースのスターティンググリッドを決するというものである。
ただし2011年は、1回目予選の結果を第2レースのスターティンググリッドに反映させるようになったのが新しいところ。昨年までは第1レースの上位8台をリバース配置にして第2レースのスターティンググリッドとしていたが、2011年は予選1回目の上位10台を第2レースのスターティンググリッドにリバース配置することになった。
予選で圧倒的な速さを見せつけたのはシボレー勢。
1回目の予選上位10台によって競われる2回目の予選ではシボレー勢がトップ3を独占、ロブ・ハフ選手が自身7回目のポールポジションを獲得、これにイヴァン・ミューラー選手と地元ブラジルのカルロス・ブエノ選手が続いた。
なおアラン・メニュ選手は1回目の予選で11番手に沈んだため、2回目の予選には出走していない。しかし予選2回目が終了後にフレディ・バース選手(セアト)に対してペナルティが課されたため、最終的な総合予選結果ではメニュ選手が順位を繰り上げて予選10番手となり、この結果を受けて第2レースのポールポジションを獲得した。
一夜明けて日曜日、いよいよ開幕戦の決勝日を迎えた。クリティバサーキットは曇り空ながら、雨の心配はなさそうな決勝の朝である。
今回の開幕戦では先に発生した東北太平洋沖地震で犠牲になった方々に、決勝第1レースのスタート前に1分間の黙祷が捧げられた。
決勝第1レース(第1戦)はオンタイムでスタート。
オフィシャルカーの先導で走行したフォーメーションラップから、そのまま停止しないでシグナルの合図でスタートを切る「ローリング・スタート方式」で始まった戦い、上位陣はそのままのポジションを維持して1コーナーをクリア。
14周のレースは完全にシボレー勢、その中でもポールからスタートしたハフ選手が主導権を握り続ける展開に。これにミューラー選手、ブエノ選手と続いた3台のクルーズはそのポジションを最後まで脅かされることなく走りきって、シボレー勢が昨年の開幕戦に続いて今回も表彰台独占という幸先の良いスタートをきった。
特に地元のヒーローであるブエノ選手の表彰台獲得には大勢の観客から惜しみない拍手と歓声が寄せられていた。
またYOKOHAMAトロフィーはBMWのクリスチャン・ポールセン選手が優勝。トム・コロネル選手と終盤に激しい4番手争いを演じ、結果的にはコロネル選手の先行を許したものの素晴らしい走りを見せてくれた。
第1レース終了から40分ほどのインターバルをはさんでスタートした第2レース(第2戦)。こちらは全車がスターティンググリッドについて停止した状態からの「スタンディング・スタート方式」が採用されている。
このスタート方式は、発進時に駆動が駆動輪によりかかりやすいFR(後輪駆動)が得意とするもの。WTCCの参戦車両では唯一のFRであるBMW、特に3番手グリッドにつけるコロネル選手に注目が集まった。
果たしてスタートと同時にロケット・ダッシュを見せたのはコロネル選手。さらに“ディーゼル・パワー”を活かしてセアトのガブリエレ・タルクィーニ選手も4番手スタートから一気に2番手へとジャンプアップを果たして1周目を終えた。
しかし3周目からシボレー勢が先行する2人に容赦なく牙を剥いた。
2コーナーでメニュ選手がタルクィーニ選手のインを鮮やかに奪って2番手のポジションを奪取。4周目にはハフ選手、ミューラー選手、そしてブエノ選手もタルクィーニ選手をパスして4台が再び隊列を形成してトップを行くコロネル選手を猛追する。
6周目、1コーナーでコロネル選手のメニュ選手が仕掛けるも、ここはコロネル選手が抑えた。だが、特に高速コーナーが主体のセクター3ではシボレーの速さがBMWより一枚上手で、10周目の1コーナーでメニュ選手が今度はコロネル選手をかわすことに成功、トップを奪還。
そのままメニュ選手はトップをキープしてチェッカーまでマシンを運び、シボレーが堂々のクリティバ完全優勝を飾ることに成功した。以下、2番手はコロネル選手、3番手は11周目にハフ選手をかわしたミューラー選手という表彰台の顔ぶれになった。
またYOKOHAMAトロフィーは、今季Proteam RacingからWTCCに初参戦を果たしたハビエル・ヴィラ選手(BMW)が優勝。スペイン出身で23歳という若さのヴィラ選手は、GP2選手権での優勝やF1テストドライバーといった経験を積んでWTCCにやって来た。これからの活躍にますます期待が集まる表彰台獲得となった。
日本から参戦の谷口選手は、マシンが2,000ccのノンターボガソリンエンジンを搭載するシボレー・ラセッティということで苦戦を強いられた。最高出力で30〜40ps程度のハンデを背負い、トップスピードも予選1回目のデータでトップのBMW320TC(ポールセン選手)の204.9km/hに対して196.3km/hとポテンシャルの差は小さくない。
しかし2レースともに粘りの走りで完走、第1レースは総合18位でフィニッシュ。第2レースでは総合15位(YOKOHAMAトロフィー7位)にポジションを上げる成績を残し、YOKOHAMAトロフィーのポイントもしっかり獲得した。
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