「日産やチームの皆さん、それといろんな人に支えられて僕はレースができていて、今ここにいるのが奇跡なようなもの。本当に皆さんに感謝しています」
シリーズ最終戦を終えて、そう語ったのは千代勝正選手。コメントの中にある、「ここ」とは表彰台の頂点。優勝を飾って、Nクラスのチャンピオンを決めた後、涙ながらに正直な胸の内を明らかにした。
千代選手にとってF3は3年目。全日本カート、そしてFCJ(フォーミュラチャレンジ・ジャパン)での活躍が評価され、2009年よりNDDP(ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム)からF3のNクラスに参戦する。
しかし、表彰台には16戦中5戦で上がるも、優勝することはできずランキングでは6位に。いったんはNDDPのスカラシップ対象外となり、チームを移籍することになる。
だが、新天地での奮闘により、1勝を挙げてランキング3位を獲得。その間もNDDPは千代選手に視線を注ぎ続け、同時に成長ぶりを高く評価。これにより、今年は復帰を果たすこととなった。
NDDPも長谷見昌弘氏を監督に起用して、体制を強化。相乗効果が結果に結びついていったと言えるだろう。
千代選手は第2戦の優勝を皮切りに、その後も2勝を加えて、この最終ラウンドにはランキング3位ながら、チャンピオン獲得の権利を残して挑むことに。
トップとの差は16ポイント。不調に喘ぐライバルを尻目に第14戦では優勝、第15戦では2位となり、一気にタイトルの芽が急成長。予選こそ4番手だったが鋭いスタートと冷静な対応でトップに躍り出て、そのままゴールまで駆け抜けた。
レースそのものの表彰式では涙を見せた千代選手ながら、チャンピオンの表彰としてチームスタッフ全員で表彰台に上がった時には、すっかりとびっきりの笑顔に。その中にはもちろん長谷見監督も含まれ、普段は辛口で知られるものの、「うちのドライバーはふたりともいい走りでしたよ。同ポイントでしたからね、本当に良かったです」とお褒めの言葉も。
「未だに信じられません! SUGOに来るまで16ポイントも差があって、たとえ僕が3連勝しても、自力では獲れなかったんですから。ただただベストを尽くし、走りに集中できたのと、追う立場でプレッシャーなく走れたのが良かったんだと思います」と千代選手。ついに努力は報われた。