■「初音ミク グッドスマイル BMW」、初タイトルの次に狙うはやはり連覇!
第3戦・セパンでの初優勝、そして第6戦・富士での2勝目でハイパフォーマンスを披露したがゆえに、性能調整を課せられ続けてきた「初音ミク
グッドスマイルBMW」。前回のオートポリスではFIA GT3のBMW Z4には明らかに不向きなコースだったとはいえ、9位という結果に甘んじて、谷口信輝選手は落胆の色を隠し得なかった。
もちろんウエイトハンデが効いていたことも事実で、ならばノーハンデとなる最終戦で、「最後に逆襲を!」と普通はなるものだが、彼らには先に述べたとおり、性能調整という足かせが依然としてつきまとっていた。だから、「性能調整さえなかったら、『たかが5点差、最後にひっくり返してやる!』ぐらいのことは言えたんだけどね」と語っていたものだ。
だが、その逆境をウェットコンディションの練習走行、予選では完璧にはねのける。
「僕らのクルマはFR(フロントエンジン・リアドライブ)だから、雨になるとトラクションのかかりやすいミッドシップやRR(リアエンジン・リアドライブ)が有利だと思っていたんだけれど、朝の練習走行を走ってみたら用意してくれたタイヤがすごくグリップしてくれて、これなら絶対にポールを獲ってやるって気持ちになったんです」と谷口選手。
パートナーの番場琢選手も「走り始めからグリップしていたし、安心して踏んで攻められるクルマ、タイヤになっていたんで、僕もいい走りができました」と。
そんなふたりをピットで見守っていた片山右京テクニカルアドバイザーも、ふたりの力走を手放しで評価。
そして、タイトルを争う上で何かアドバイスを? という問いに対し、「頑張れと言ってタイムが上がるようなドライバーじゃないから、特に何か言ったわけじゃない。でも、これまでの反省点をチーム全体で修正できるよう、僕も力を尽くした。あとはミスをしないことを心がけるだけ、みんながね」と語っていた。
いざレースが始まっても、ドライバーにも、そしてスタッフにもミスは一切なかった。また、いきなり装着することになったスリックタイヤも、レインタイヤ同様完璧に機能。ドライバーふたりをコンスタントに周回させた。
マシンのメンテナンスを担当し、谷口、番場両選手が全幅の信頼を寄せる、RSファインの河野高男チーフエンジニアは、ふたりの流す涙を見て、「特に谷口選手はGTを10年やって、ようやくチャンピオンが獲れたんだから、そりゃ涙も流すでしょう。何回もチャンピオン争いをしてきて、その都度辛い思いをしてきたんだから。まぁ、僕らもようやく肩の荷が降ろせました」と、ドライバーの思いを代弁するかのように語ってくれた。
「きっと僕も、人生が変わるでしょう。GTでチャンピオンが獲れるなんて、まずできることじゃないから。1年間やってきて、大変なことばかりでしたが、すごく自信がつきました。勝ちたいという気持ちがどこよりも強かったのが、(チャンピオン獲得の)最大の要因だったように思います。そのために、ドライバーを含めた体制、それと右京さんまで考えられる最大のパッケージを用意できたこと、それも大きかったんじゃないでしょうか。
初めにチームを作る時、何としても勝てるチームを、と思って谷口選手に声をかけてOKしてもらえたけど、果たして番場選手とうまくやっていけるのか、少し不安もあったんです。でも番場選手もすごく成長してくれて、精神的にも強くなってくれました」と語るのは大橋逸夫監督。きっとドライバーに負けず劣らず、喜びはひとしおであったことだろう。
「今度は連覇を狙いたい」という言葉も、間違いなく本音のはず。そのためにも、ここからがまた新たなスタートになるが、しばらくは心地よい達成感をチーム全体で満喫してほしいものだ。