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SUPER GT Round 7
開催日
2011年10月1日-2日
開催場所
オートポリス (大分県)
天 候
曇り
路 面
ドライ
決勝周回数
54周 (1周 = 4.674km)
参加台数
37台
(ADVAN装着車 20台)
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2011シーズンのタイトル争いの天王山ともいうべき、第7戦「SUPER GT IN KYUSHU 250km」は、2年ぶりの開催となった大分県・オートポリスを舞台に行われた。

土曜日の正午から始まった公式予選1回目では、スーパーラップ進出を賭けトップ10争いが展開されることとなったが、まず序盤の混走時間帯に「ADVAN KONDO GT-R」はビヨン・ビルドハイム選手がコースインも、リヤカウルが浮き上がってしまうアクシデントに見舞われ、オレンジディスクの提示を受けてしまう。
このため予定より早めにピットインすることとなったビルドハイム選手だが、チームはこの段階でビルドハイム選手がマークしていた1分45秒461というタイムで基準タイムクリアは可能と判断。限られた時間を有効に使うため、残りの混走時間帯を安田裕信選手に託し、GT500占有時間帯でのアタックに備えてセットアップに集中することに。

その甲斐あって、混走時間帯に5番手とまずまずのパフォーマンスを見せた「ADVAN KONDO GT-R」は、GT500の占有時間帯のラストアタックでは、1周に賭ける形でソフト系のタイヤで安田選手がアタック。ピンポイントでチェッカー直前のファイナルラップを狙い、渾身のアタックを見せた安田選手は、見事に1分41秒460をマークし10番手に浮上。ギリギリながらスーパーラップ進出を決めたかと思われたが、このセッションのトップタイムをマークした「S Road MOLA GT-R」が、1分39秒台にまでタイムアップしてしまった結果、予想以上に基準タイムのハードルが上がってしまい、ビルドハイム選手がまさかの基準タイム落ちの憂き目に。
予期せぬ展開で「ADVAN KONDO GT-R」はスーパーラップ進出を逃し、決勝では最後尾スタートとなってしまう。

同じく予選1回目に臨んだ「WedsSport ADVAN SC430」は、今回荒聖治選手がアタッカーを務めることとなったが、片岡龍也選手が1分45秒181で基準タイムをクリアした後、代わった荒選手が1分43秒475にまでタイムアップし13番手で混走時間帯を終える。
占有時間帯に再び荒選手がアタックを敢行、1分42秒975にまでタイムを詰めたものの、惜しくも14番手に終わり「WedsSport ADVAN SC430」もスーパーラップ進出を逃すこととなった。

GT300のスーパーラップでは、最初に走った「初音ミク グッドスマイルBMW」の谷口信輝選手が1分52秒222を出して、まずはトップに。4番目に走行した「R&D SPORT LEGACY B4」の佐々木選手は練習走行の好調ぶりを改めて披露して、1分50秒447で谷口選手のタイムを上回る。この驚速タイムはその後も破られず、佐々木孝太選手は自身5回目、レガシィでは初めてのポールポジションを獲得することとなった。

2番手は青木孝行選手の駆る「#86 JLOCランボルギーニRG-3」ながら、トップとの差はほぼ1秒。3番手には「ZENT Porsche RSR」、4番手には「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」、5番手には「COROLLA Axio apr GT」がつけ、ADVANユーザーがここまで上位を独占。「初音ミク グッドスマイルBMW」は7番手から決勝レースに挑むことになった。


爽やかな秋晴れとなった土曜から一転、曇天下で気温が下がり、肌寒いコンディションとなった日曜。気温15℃となった午前9時20分からのフリー走行で決勝へのセットアップとタイヤ評価を行った「ADVAN KONDO GT-R」と「WedsSport ADVAN SC430」は、いよいよ午後2時からの54周の決勝に駒を進めた。

昼頃にはやや暖かくなったものの、それでも気温は17℃、路面温度は24℃という涼しいコンディションでスタートした決勝。「ADVAN KONDO GT-R」はビルドハイム選手、「WedsSport ADVAN SC430」は片岡選手がスタートドライバーを務める。オープニングラップをポジションキープで終えた2台だったが、3周目にはビルドハイム選手が片岡選手を捕らえて14番手に。早々に1分44秒台にペースアップしたビルドハイム選手はしばらく14番手で走行、片岡選手も1分45秒台で着実に周回を重ねていたが、6〜7周目あたりから前を行くライバルマシンたちのペースが徐々に落ち始めると、2台は怒濤の追撃を開始することに。

8周目に「EPSON HSV-010」を捕らえ13番手としたビルドハイム選手は、翌周には12番手に浮上。片岡選手も同じく13番手にポジションを上げて行く。

スーパーラップで好タイムを狙って、ソフト系のタイヤを選択したマシンが多く、そうしたライバル勢のラップタイムの落ち込みを想定していた「ADVAN KONDO GT-R」と「WedsSport ADVAN SC430」の2台は、早々に2ストップ作戦への切り替えを強いられるライバル勢のピットインを横目に、安定したペースでじりじりとポジションアップ。13周目には「ADVAN KONDO GT-R」9番手、「WedsSport ADVAN SC430」10番手と揃ってポイント圏内に進出。

ビルドハイム選手、片岡選手はともに1コーナーや第2ヘアピンのブレーキングで、ペースに苦しむライバル勢を蹴散らすかのようにオーバーテイクを繰り返し、20周終了時には「ADVAN KONDO GT-R」が5番手、「WedsSport ADVAN SC430」が8番手に。

24周目、「ADVAN KONDO GT-R」は大健闘のビルドハイム選手をピットに呼び寄せ、安田選手にスイッチ。一方コンスタントなラップを刻み続ける「WedsSport ADVAN SC430」は、一時2番手にまで浮上する活躍で30周目に荒選手にバトンタッチする。

すべてのマシンがピット作業を終えた35周目の段階で、安田選手の「ADVAN KONDO GT-R」は7番手、荒選手の「WedsSport ADVAN SC430」は10番手を走行。2台は周囲のライバル勢よりもペースに勝っている。41周目の第2ヘアピン進入で、「D'STATION KeePer SC430」を捕らえ9番手に浮上した荒選手の「WedsSport ADVAN SC430」は、さらに45周目に「ウイダー HSV-010」に襲い掛かり、1コーナーでアウトから並びかける。ここで激しく抵抗した「ウイダー HSV-010」は、「WedsSport ADVAN SC430」と接触しながらポジションを守ろうとするが、荒選手は冷静に「1号車がアウトはらんで行ったので、クロスを掛ければ前に出られるはず」と2コーナー入り口で8番手にポジションアップを果たす。

一方、コンマ数秒差で6番手の「KEIHIN HSV-010」を射程に収めていた安田選手は、46周目の最終コーナー立ち上がりでうまく合わせてスリップを奪うと、1コーナーで「KEIHIN HSV-010」を仕留め、6番手に躍進する。

残り周回も少なくなり、このままのポジションでチェッカーかと思われたものの、53周目の1コーナーで2番手を走行していた「DENSO SARD SC430」がエンジントラブルに見舞われストップ。これによってひとつずつ順位を上げることとなった「ADVAN KONDO GT-R」は5位で、そして「WedsSport ADVAN SC430」は7位でそれぞれフィニッシュ。ともにADVANタイヤの安定したパフォーマンスを最大限に活かし、見事最後列からのポイント獲得を果たすこととなった。

GT300の決勝は、ポールポジションからスタートを切る、「R&D SPORT LEGACY B4」の山野哲也選手が絶妙のダッシュを決めて、1コーナーにトップで進入。これに「#86 JLOCランボルギーニRG-3」の坂本祐也選手、「ZENT Porsche RSR」の土屋武士選手、そして、「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」の加藤寛規選手が続き、ここまでは予選オーダーそのまま。

スタートで一気にポジションを上げたのが「初音ミク グッドスマイルBMW」の谷口選手で、7番手から5番手に。タイトルを争う「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」をも抜いて、背後に従えることになった。2周目には土屋選手が2番手に浮上するが、坂本選手も食らいついて離れず。やがて、この争いには加藤選手も加わり、3台が連なり合って走行を重ねていく。

そんなバトルを尻目に、山野選手は他を圧するスピードで周回し、1周ごとに差を着実に広げた結果、佐々木選手とバトンタッチした24周目には、ほぼ10秒の貯金を築き上げていた。その後、暫定トップに躍り出た土屋選手は一気にスパートをかけた一方で、後方ではバトルが激化。26周目に坂本選手と加藤選手が接触、この時、順位変動はなかったものの、次の周に加藤選手が前に。その直後に坂本選手はスピンを喫し、後続車両に追いつかれはしなかったものの、加藤選手とのギャップが拡大してしまう。

そして、28周目に「#86 JLOCランボルギーニRG-3」が青木選手に、33周目に「ZENT Porsche RSR」が都筑晶裕選手に交代し、「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」がトップに。この時、既に「R&D SPORT LEGACY B4」の佐々木選手は2番手に浮上、35秒差にまで迫っている状況。「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」は35周目にピットインしたが、ここでストレート上を佐々木選手がすり抜けトップを奪われはしたものの、高橋一穂選手は2番手につけることに成功する。

その高橋選手の約4秒後方を走るのは、「SG CHANGI IS350」だった。予選こそ14番手だったものの、折目遼選手が10番手まで順位を上げ、17周目には早々とアレキサンドレ・インペラトーリ選手と交代。コンスタントに周回を重ねたことによりこのポジションまで追い上げており、その勢いのまま高橋選手との差も詰めていく。

「初音ミク グッドスマイルBMW」は24周目に谷口選手から番場琢選手に代わっていたが、ピットで「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」の逆転を許してしまう。また、47周目の1コーナーで「エヴァンゲリオンRT 初号機アップル紫電」と「SG CHANGI IS350」が接触するアクシデントの間に、「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」は2番手に浮上。

そんな後続のアクシデントなど知る由もなく、トップをひた走る「R&D SPORT LEGACY B4」の佐々木選手は、25秒もの大差をつけてポール・トゥ・ウィンを達成。第5戦・鈴鹿に続く今季2勝目をマークすることとなった。

3番手には「SG CHANGI IS350」がつけ、4位に「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」が続き、5位は「ZENT Porsche RSR」が獲得。最終ラップまで6番手は「ハセプロMAイワサキaprカローラ」が続いていたが、最終コーナーでエンジンブローに見舞われ、土壇場で「#86 JLOCランボルギーニRG-3」が6位を獲得。

ポイントリーダーとして今大会に臨んだ「初音ミク グッドスマイルBMW」は9位でフィニッシュ。その結果、ランキングでは再び2位となってしまったものの、トップとの差を5ポイントに留めることに。この結果最終戦でのタイトル争いは、「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」との一騎討ちとなった。
 
Driver's Voice
安田裕信 選手
 【今回の成績 : GT500クラス 5位】
序盤、ビヨン(ビルドハイム選手)がうまくポジションを上げてくれましたね。僕のスティントでは少しフロントタイヤが厳しい部分もあったものの、リヤタイヤが問題なかったので、「ウイダー HSV-010」と「KEIHIN HSV-010」をうまくパスすることが出来ました。これだけ決勝のパフォーマンスが良かっただけに、予選で最後尾になってしまったことはショックでしたが、良いレースが出来たので……。
5位という結果は悪くないですし、他社製タイヤユーザーと互角以上に戦えたことは良かったと思います。決勝で気温が下がり、涼しくなったことが僕たちとADVANタイヤにとって良い方向でした。かなり暑いか、逆に寒いという状況は、今の僕たちにとってはプラスなので、最終戦のもてぎとJAFグランプリもまた楽しみですね。きっと今日のように速いクルマとしっかりレースが出来ると思います。
 
ビヨン・ビルドハイム 選手
 【今回の成績 : GT500クラス 5位】
今日は非常に良いレースが出来てうれしいよ。スタートして2周ほどは状況を伺っていたけれど、数周したところで他のドライバーがタイヤの消耗に苦しみ始めたのが分かったので、ポジションを徐々に挽回していった。
しかし、今日のADVANタイヤのパフォーマンスは素晴らしく、特にプッシュする必要もなくタイヤをうまくセーブしながらでもポジションを上げて行くことが出来た。特に10周を過ぎてからはホンダ勢などを中心にオーバーテイクを続けた。ピットインのタイミングも良かったと思うし、ピット作業も早く、後半のヒロ(安田選手)のスティントも良かったので、15番手から5位入賞を飾ることが出来たんだ。
最終戦前にテストが出来るので、そこでさらにタイヤを開発してパフォーマンスをアップし、最終戦での好リザルトに繋げたいね。
 
片岡龍也 選手
 【今回の成績 : GT500クラス 7位】
まだまだ予選に関しては足りないところがたくさんあるのですが、久々に"レース"をすることは出来ましたね。
ここはタイヤへの負荷が大きいところですが、公式練習から一貫してラップ数によるタイヤの落ち込み幅が少ないことは確認出来ていましたので、決勝で周囲のマシンがドロップしてくれればチャンスはあると思っていました。案の定最初のスティントで周りのペースが落ちて来る中で、今回ADVANタイヤのロングランでの強さを活かすことが出来ました。
これを踏まえて、さらに予選を始め、クルマとタイヤの両方で全体的なパフォーマンスを上げて行ければ。もっと前のグリッドからスタート出来ていれば、余計な小競り合いをすることなく、さらに上位でフィニッシュ出来るチャンスが出てくるはずですからね。
 
荒 聖治 選手
 【今回の成績 : GT500クラス 7位】
週末全体を振り返ると、なかなかラップタイムが上がって来なくて厳しい状況ではありましたね。いろいろトライしたんですが、クルマの速さを引き出すことが難しかったです。
今回僕がアタックしたのですが、タイヤ自体のグリップ感などの面では今年一番の感じになって来て、確実に前に進んでいるものの、トップや上位陣のライバルたちと比べると、まだまだ課題がたくさんあります。そんな中で、今回タイヤを長持ちさせるようなセットアップを徹底的に進めた結果、決勝では他車に比べてタイヤのドロップも少なく、良いペースで継続して周回出来ました。その結果として苦しいなりに戦えましたし、7位にまで浮上出来たのだと思います。最終戦では周囲が軽くなるのでより厳しい状況になりますが、もっと上を狙って頑張ります。
 
山野哲也 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
最高に嬉しいです! SUPER GTで1年に2勝は、かなり難しいし、僕らは8月の後半に勝ったばかりなのに、1か月半後にまた勝てるなんて信じられません。チームが完璧なクルマに仕上げてくれたのが、いちばんの勝因だったと思います。まず、孝太がポールポジションを獲得してくれて、いいポジションからスタートできたので楽にレースできたし、すごく感謝しています。
スタートから3周はとにかく逃げることに専念し、FIA-GT勢に抜かれないよう、すごく気を使いましたけれど、そこから先はタイヤをマネージメントして走れました。シーズン前半と比べると、すごくレガシィB4は進化しているから、最後もきっちりレースして、ベストシーズンとしたいと思います。
 
佐々木孝太 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
優勝できてホッとしています。今回はクルマが最初から良く、セットもほんのちょっとだけいじるだけで行けて、メカニックのみんなには感謝しています。山野さんもタイヤを見事にキープして走ってくれたので、僕も安心して次のタイヤをチョイスできました。
山野さん、実は今日が誕生日なんですよ。バースデーウィンなんてなかなかできることじゃないし、歳はいくつか言わないですけれど(笑)、まだまだやれることを証明してくれました。最初から後ろを突き放してくれたんで、あれなら大丈夫だとすぐ思いましたし、見守っている最中も心配はありませんでした。
 
折目 遼 選手
 【今回の成績 : GT300クラス 3位】
予選ではタイヤ選択に失敗して、後方からのスタートになってしまったんですが、レースに向けてチームがセットをアジャストしてくれたので、バランスが良くなりました。そのおかげで最初の方からオーバーテイクができました。本当はアレックス(インペラトーリ選手)のためにも、もう少し長いスティントで頑張ってバトンを渡したかったんですが、外車勢に引っかかってしまったので、その分アレックスに頑張ってもらおうと早めに交代したんです。
ちょっとドキドキする場面もありましたけど、素晴らしい戦いを見せてくれました。今日の戦いは僕らの自信につながると思っています!
 
Turning Point
■「ADVAN KONDO GT-R」を牽引、エースドライバーの重責を果たす期待の若手・安田裕信選手

「ADVAN KONDO GT-R」の若きエースとして奮闘を続ける安田裕信選手。昨年まではより経験豊富な外国人ドライバーとコンビを組むなどして来たが、今季は新たにビヨン・ビルドハイム選手をチームメイトに迎え、GT500の激戦を戦うKONDO RACINGの牽引役の重責を担っている。

今大会の前週には、ポイントリーダーとして全日本F3選手権の最終ラウンドに臨むも、僅か1ポイント差で戴冠を逃す悔しさを味わった安田選手。

「確かに3日くらいは落ち込みましたけれど、もう終わったことを振り返っても仕方がないですから。そういう意味では今回のオートポリスでも、予選がああいう結果(最後尾)になってしまったけれど、終わったことは仕方がないと前向きに捉えていました。そういう気持ちでレースに臨んだことも良かったんじゃないですか」

今回の予選1回目を含め、温まりの良いADVANの特性を活かして、周回数を絞ってワンチャンスを確実にモノにする安田選手は、今季は何度も予選アタッカーとして「ADVAN KONDO GT-R」を上位グリッドに送り込んで来た。

「今年でGT500は3年目ですし、少なくともそういう部分は出来るようになって来たかな、という感触はありますね。今のGT500では、どのタイヤメーカーも非常に力が入っていて激戦区ですから、スーパーラップに残るのも厳しい戦いですから」

エースドライバーとしての安田選手の初シーズンも、はや7戦を終了し、残すは最終戦のみとなった。

「去年はタイヤ無交換という作戦で1勝することが出来たんですが、今年も開幕戦では窓が曇るトラブルがなければ優勝するチャンスが充分にありましたし、それ以降の戦いに関しては、確実に今年の方が予選を含め、良いリザルトを残せて来ています。自分としても、その部分で良い仕事は出来ているんじゃないか、という気持ちもあります」

このようにエースとしての自負と手応えを感じるという安田選手は、最終戦をどのように戦うのだろうか。

「GT500はレベルが高い戦いですし、最終戦はまたノーウエイトの戦いになりますが、なんとか最後に表彰台に乗ってシーズンを終えたい。気温が下がってくる時期ですし、そのチャンスは充分にあると思います。JAFグランプリでは、僕は去年4位でフィニッシュ出来ていますし、シリーズ戦ではないとはいえ気を抜くことなくしっかり戦うつもりです。残りのもてぎと富士では、今の僕たちのクルマとタイヤのパフォーマンスを100%使い切って走れるよう頑張ります」

チームを引っ張りながら、GT500の厳しい戦いで成長を続ける安田選手。エースドライバーとして戦って来た初年度の集大成を、最終戦もてぎとJAFグランプリでは思う存分に見せてくれそうだ。



■SUPER GTで唯一の3台体制 次戦こそ表彰台目指す 「#86 JLOC ランボルギーニRG-3」

「R&D SPORT LEGACY B4」の快進撃の陰に隠れはしたものの、今回のレースで侮りがたいスピードを見せたのが、「#86 JLOCランボルギーニRG-3」だった。3台のランボルギーニ・ガイヤルドRG-3を擁するJLOCの中で、これまで唯一目立った活躍がなく、前半戦はトラブルが相次いだものの、ここに来てシューティングも完了し、またウエイトハンデに苦しんでいないこともあって、ようやく本領を発揮することに。

坂本祐也選手と青木孝行選手も、内心期するものがあったようで、走行前から「今回は面白いレースができそうな気がする。僕らには関係なくなっちゃったけど(苦笑)、ここからタイトルを争っているチームにはいろんなことが起きると思うんですよ。その隙をつけば、きっと!」と青木選手が語っていたほど。

練習走行、予選をそれぞれ5番手でクリアした後、続いて挑んだスーパーラップでは、なんと青木選手が激走を見せて2番手に浮上する。

「予選からアンダーステアが強くて、それはスーパーラップでもあんまり変わらなかったんですけど、だましだまし走ったら、何とかなったという感じ。正直(ポールポジションの)レガシィのタイムはまったく見えませんけど、2番になると1番が欲しくなるものですね!」と青木選手。

その気迫に坂本選手も応え、担当したスタートではまずポジションをキープ、2周目には3番手に後退するも、「ZENT Porsche RSR」に食らいついて離れず。本文でも触れたとおり、「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」をも交えたバトルは、トップが逃げ続けていただけに、むしろ観客の視線を釘づけとした。その走りを見守っていた青木選手も「頑張っていたよね」と評価はしたが、不運なアクシデントも。

「やっちゃいました……。ヘアピンで加藤(寛規)さんと当たってしまって、その時は抑えたんですが、次の周に抜かれてしまって。ピットとの交信で次の周入ることになっていたんですが、100Rでリヤが出て、いつものように堪えられるかな、と思ったらスピンしちゃって。必死に抵抗してなんとか戻ったんですけど、その時に足をつってしまって。それでアクセルの感覚がなくなっていて、次のヘアピンで回ってしまい、それがすごいロスになってしまいました」と坂本選手。それが28周目のことだった。

「表彰台には立てたレースだったから、悔しいけれど、それはまぁ、坂本選手が頑張った結果だろうから。ただ、最初のスピンだけだったら10秒ぐらいのロスで済んだと思うし、15番手まで落ちたところから、6位まで上がって来られたんだから。ペースは良かったし、最後までタイヤも良くて、最後まで変わらないペースで走れたから……。う〜ん、でも悔しいな。坂本選手には断髪でもしてもらうことにしましょう、モヒカンがいいかな(笑)」と青木選手。

さらに加えて、「富士以降、クルマはすごく良くなってきているんで、この流れをもてぎに持ち込んで、リベンジしたいですね」とも語ってくれた。昨年もガイヤルドは、もてぎで3位になっており、相性は悪くない。JLOCの3台が、最終戦で台風の目となるかも!
 
Engineer's Voice
荒川 淳
今大会は、例年10月下旬に行われていましたが、今年は10月第1週の開催。さらに高原のサーキットということで、雲が出るとかなり冷え込むものの、晴れればかなり暑くなって路面温度が40℃を超えることがあるくらい、気象条件によって非常に大きく気温や路面温度が変わるということで、持込みセット数に厳しい制限がある現状のレギュレーションでは、すべてを完璧に合わせ込んでくることは難しいところがあります。
しかし、過去のデータを踏まえて、比較的低温のレンジを意識して、ソフトとミディアムというポジションを持ち込んで来ていました。オートポリスでのテスト時には路面温度が40℃を超えるようなコンディションでしたから、今回のレースウィークはそこまで暑くならないだろうという予測があったわけです。そういう意味で、冷え込んだ決勝日はかなり下限ではありましたが、土日を通じて我々が想定していた範囲でコンディションが推移したと言えると思います。

GT500の2台は惜しくもスーパーラップ進出を逃してしまったわけですが、その分スタートタイヤをチョイスすることが出来るということで、(気温17℃、路面温度24℃というような)決勝スタート時の気象条件を見てタイヤ選択が出来たという面がありました。ただ、想定していた範囲でしたので、元々持ち込んだ中では柔らかい方でという戦略を持っていました。

「ADVAN KONDO GT-R」については、序盤である程度ポジションを挽回したいという方向性でしたので、ビルドハイム選手は柔らかい方のソフト系のタイヤでスタートし、後半の安田選手はそれより少し硬い方のタイヤで走りましたが、「WedsSport ADVAN SC430」に関しては、ロングランで非常に安定したペースで周回出来るという確認が出来ていましたので、元々引っ張れるだけ引っ張ろうという戦略がありましたので、ふたりとも同じミディアム系を選びました。

ただ、スーパーラップやフリー走行でのタイムの推移などを見ていると、他社製タイヤユーザーさんの中で、上位陣はかなりタイムダウンするのではないかという読みがありましたので、序盤にどれだけ離されずについて行けるかがポイントになると思っていました。ある意味、予想どおりの展開になりましたね。

その結果、スターティンググリッドの位置を考えると、「ADVAN KONDO GT-R」が5位、「WedsSport ADVAN SC430」が7位ですから、チームとドライバーは良く頑張ってくれたと思います。ただ、もっと前からスタート出来ていれば、さらに上位も伺えたはずという思いもありますので、今後は予選でのパフォーマンス向上を課題に挙げたいと思います。

GT300に関しては、「R&D SPORT LEGACY B4」がきれいな逃げ切りを見せてくれました。持ち込んだタイヤの中から、ソフト系をチョイスしてポールポジションを獲得していたので、決勝でも逃げられるだけ逃げて、という作戦だったのですが、正直決勝日が寒くなり、タイヤの面では天候も味方してくれたように思います。もし気温が高くなり、路面温度がかなり上昇したりしていれば、もっと苦戦を強いられていたかもしれません。柔らかい方のタイヤで、山野選手が良く引っ張ってくれましたし、後半の佐々木選手はワンランク硬めのタイヤでの走行となりました。

残るは最終戦もてぎのみですが、GT500はチャンピオンシップという面で残念ながらもうチャンスが無くなってしまいましたが、今年は「ADVAN KONDO GT-R」がまだ表彰台に上れていないので、是非とも最終戦では表彰台を目指してもらいたいと思います。そのためにも予選順位の向上が必要ですし、岡山国際でのテストを行う予定ですので、なんとか最終戦での結果に繋げたいですね。

またGT300に関しては、残念ながら今回でまた「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」に逆転されてしまいましたので、ポイント的には厳しい部分もあるのですが、タイトルの可能性を持つ「初音ミク グッドスマイル BMW」に、なんとか逆転チャンピオンを狙ってもらいたいですね。
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