2011年の東京オートサロンに向けて、最新のヨコハマタイヤをテストドライブするために集まった4人のプロフェッショナル。
クルマ、そしてタイヤに精通したプロフェッショナルたちが、それぞれの立場で今の、そしてこれからのクルマとタイヤ、アフターパーツマーケットについて語る“座談会”の模様、後半をお届けします。
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−最近のチューニングやドレスアップについて、どのように分析されていますか?
桂伸一さん(モータージャーナリスト) :
最近の子供はナイフで鉛筆を削れないっていうでしょ。
30年くらいまえに模型屋の社長さんが「将来はプラモデルじゃなくて、完成品を売らなきゃいけない」って先を読んだ発言をしていた。
つまり子供たちの工作技術が低下して、そんなことすら出来なくなるかもしれないっていう危機感。それが決して間違っていない現状にあると思う。
ラジコンは完成車だし、プラモデルの組み立ても簡単な“はめ込み式”が主流だし。
クルマのチューニングやドレスアップもそうで、昔はDIYっていうか、「フロントにはこのエアロパーツをつけて、それに色を塗って」、なんて自分で考えたけれど、今は違う。
タイヤ交換やオイル交換ですら自分でやらないのが当たり前でしょう。そういう傾向を受けて、今では自動車メーカーも純正用品として色々なエアロパーツやサスペンションキットなんかを、ディーラーで購入出来るように用意しているよね。
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−ひとつの傾向として、若いころに“走り”を楽しんだ人がオートサロンに再び興味を示すようなことはありますか?
桂伸一さん :
そういう、若いころに“走って”いたような人たちが、今はミニバンに乗っている、ということなのかな?
小林真一さん(MCR代表) :
実際のところは、そういう人のみんながみんな、ミニバンに乗っているというわけでも無いですね。
織戸学さん(レーシングドライバー) :
でも、40歳前後くらいから、また走り始めているっていう人も多いよね。
鈴木康昭さん(Studie AG. CEO) :
BMWユーザーで言えば、3シリーズを中心にそういう「昔は走っていた」っていうお客さんも多いと思うんですよ。
一度は走りを重視した車から降りて、年齢を重ねて給料も上がり、円満な家庭も築いて、子供も大きくなって。そうすると、「お父さんも、そろそろ好きな車を買っちゃおうかな」っていう感じで。
さらにそこからコアな人は、一世代や二世代までのモデルを趣味用で所有して、アマチュアレースイベントやサーキットの走行会に出場している、というケースも多いですよね。
小林さん :
日産系で言えばスポーツカーの代表はGT-Rですが、ある程度の年齢になった人はGT-Rに戻るんじゃなくて、フェアレディZに行っていますね。
今のGT-Rって、ちょっと強烈な部分もあるから所有するには色々と考えることもあるでしょう。だから60歳台のZ乗り、っていう人が増えている。「恥ずかしいけれど」なんて言いながらも楽しんでいるの。

一度車を降りた人って、車に飽きて降りたっていう人は戻ってこないんです。逆に、子供が出来たとか、生活スタイルが変わったからという理由で降りた人は、戻ってきているよね。それがいつのタイミングかというと、だいたい40歳台の後半くらい。その辺りの年齢層でガッツのあるユーザーが増えてきているよね。
そのくらいの年齢で車に戻ってくる人って、とっても強烈なの。本当に車に集中しているっていう感じがする。ただ、若いころとは違って、闇雲にタイムを突き詰めるとかじゃなくて、とにかく車を楽しみたいって感じだね。
織戸さん :
そういうユーザーをターゲットにするというのは、これからのチューニングやドレスアップ業界にとって“アリ”だよね。
新しいクルマの楽しみ方を提案していくという意味で。
小林さん :
そう、だからそういうユーザーをどうやって走行会なんかに連れて行くかも考えなければならない。
ちょっと財布の余裕もあるし、安全に気持ちよく楽しみたいっていう嗜好があるから、どちらかというとミニサーキットじゃなくて、広くて安全性も高いサーキットを会場にすると喜ばれる。例えばスポーツランドSUGOなんかで走ると、みんな大喜びだったしね。
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−2011年のオートサロンでヨコハマタイヤは、それまでよりブースを拡大して展開しました。皆さんにとってヨコハマタイヤやADVANのイメージというのは、どのようなものですか?
小林さん :
やっぱりオートサロンなんかを通じて、ヨコハマタイヤとしてクルマの世界を盛り上げていくというのは大切な事だよね。
その中で、ADVANっていうのは若いころに本当に憧れていたブランドだし。イメージとしては「男、ADVAN」っていう感じじゃないかな!?(笑)
ちょっと硬派で格好良い存在。
鈴木さん :
僕にとってのADVANは、体育会的なイメージかな。
モータースポーツをやるなら、とことん真剣にやるという感じで、もう同好会というレベルのノリじゃない。ハイグリップなスポーツタイヤを作るにしても、凄くストイックに性能を突き詰めていて、とても熱いものを感じますね。

桂さん :
僕にとってのADVANは・・・、敵だったね。
(注 : 桂さんはN1耐久などのレースで、ADVANとはライバルの関係で戦っていました)
一同 :
(爆笑)
桂さん :
いや、正確には“敵”じゃないな。“もっと上の存在”だったから。
赤と黒のADVANカラー、そしてADVANっていうネーミングそのものも格好良いし。ADVANじゃないものでレースをやっていた身としては、憎たらしい存在でもあったよね(笑)。
今だから言えるけれど、たまたま同じチームで違うタイヤをつけた2台で参戦していたことがあって、ADVANを装着した方の車のドライバーが来られないからって、僕が雨の中で乗ったことがある。そうしたら「なんだこれ、こんなのとオレは戦っているのか!?」って思った。だって、簡単にポールポジションを獲得できるレベルのタイムを出せちゃうんだもの。それが自分が本来乗っている方の車に乗り換えたら、5番手とか6番手とかのタイムなんだから。
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−ADVANについては、やはりモータースポーツを通じてのファンも伝統的に多いですね。
織戸さん :
今はタイヤがワンメイクというレースが増えて、タイヤ競争の場が少なくなっちゃったからね。
僕らがADVANを憧れの目で見ていた頃は、ひとつのカテゴリーでいくつかのタイヤメーカーが戦っていた。でも、今はほとんどのレースがワンメイクになったから、タイヤメーカーの色を出しにくい。その点ではSUPER
GTなんかは貴重な存在だね。
それから、一般市販タイヤの世界でも、ADVANは先駆者であることが多かった。今は隙間的なところから新しいライバルも出現しているけれど、確固たるイメージ造りを最初に完成させたのはADVANだと思う。
ユーザーの口コミなんかで「あのタイヤはいいんだよ」って広まる、その手前の段階でタイヤメーカーは何をするべきなのか。どこで、どんなタイヤを買えば良いのかを、しっかりとユーザーに伝えていかなければならないよね。
そして、タイヤについてはこれから、再び性能を重視する方向に回帰するんじゃないかと思うよ。ドレスアップ的なこととか価格の安さとか、タイヤを選ぶための要素はいろいろとあるんだけれど、やっぱり最後はしっかりした性能に尽きるからね。
小林さん :
振り返るとADVAN系のレーシングドライバーって記憶に残っている人が多くて、その誰もが格好よくて、みんなの憧れの的になっていた。今だって若い子たちは、織戸選手や谷口(信輝)選手に憧れているよね。
タイヤメーカー系のドライバーで、そういう対象になるっていうのは、ADVANは特に多いんじゃないかな。
織戸さん :
ADVANを一言で表現すれば、僕にとっては単純に「憧れ」。
これからは若い子たちにそういう“憧れ”を作っていかなければならないから、頑張っていきますよ。
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