安全規定を除けば無制限の改造が認められるDクラス。ジムカーナではスズキの2輪車『隼』のエンジンを積んだフォーミュラ隼が主力車種だ。
2008年まで4年連続で全日本チャンピオンを獲得してきた小林キュウテン選手。
タイムと戦うスラローム競技は、非常にメンタルなモータースポーツだといえる。無敵といわれる選手は、常に自分の中に敵を求めなければならない。毎戦目標タイムを設定し、見えない敵との戦いを繰り返してきた。
だが、今シーズンはちょっと様子が違った。
1、2戦こそ優勝を飾り順調なスタートを切ったものの、ここからライバルの岡村貴之選手(ADVAN)に3連勝を決められる。第6戦の浅間台では斉藤孝行選手(ADVAN)が優勝。この時点でシリーズトップの岡村選手との差は21ポイントで3位。
チャンピオン獲得に向け、小林選手は残り3連勝の課題を自らに課す。
「究極のMですからね(笑)。先に口に出してから、後でどうしよう? って悩むタイプですから。昔からそれは変わってないですね。でも、今年はきつかったです。」
だが4年連続チャンピオン、孤独な戦いの中で培われた精神力は伊達ではなかった。
ニューエンジンを投入した鈴鹿では、1本目3位から逆転優勝。続く第8戦おおむたは2本目自己タイムを更新して連勝。岡村選手に2ポイント差をつけて、シリーズリーダーに戻る。
そして迎えた第9戦。
「運良く2連勝できっちゃったもんで、逆にそれがプレッシャーになった。イベント1週間前から、夜中の2時頃にライバルの顔が浮かんで眠れなくなっちゃうんですよ。今回泊まったホテルでもほとんど眠れてないんじゃないかな?
こんなことは全日本デビュー戦の時以来です。」
1本目、岡村選手は1分23秒953で小林選手に対しコンマ5秒届かない。最終戦、最終クラス、最終ゼッケン。文字通り2009シーズンの総決算となる2本目。
斉藤選手が岡村選手のタイムをコンマ5秒上回る23秒400を叩き出しトップに立つ。岡村選手はこれに追いつけない。
この時点で小林選手の5連覇が確定。
しかしスターティンググリッドにいる小林選手は知るよしもない。渾身の走りから叩き出されたタイムは、23秒341。ゴール後、歓喜の雄叫びを上げる小林選手。21ポイント差を逆転し、自力でもぎ取ったチャンピオンだ。
「今シーズンDクラスは、ADVAN勢が全勝しました。だけど公開練習では他社に負けることもあった。
だからADVANタイヤも、マシンもドライバーもバージョンアップして来年も全勝を続けたいですね。」
明るさを失わず常に前向きな小林選手。
目標とするミスターADVAN・山本真宏選手の記録に追いつくべく、2010年もチャレンジを続ける。