2007年のD1グランプリ第3戦、前戦の富士スピードウェイから鈴鹿サーキットへと戦いの舞台を移して行われた。
昨年からD1に加わった鈴鹿ラウンドは、通常のレースとは異なる"逆走"で競われるコースレイアウトとなる。
審査コーナーは逆バンク、但し昨年よりも助走区間が100m以上伸ばされたため、進入速度は高まることに。ハイスピードから各コーナーでクリップをきっちり取りつつ、角度をつけた豪快なドリフトを振り返しを交えながら披露することが求められる難易度の高いコースである。
　
決勝が行われた5月27日は真夏のような猛暑となり、大勢のD1ファンがスタンドを埋めつくした鈴鹿サーキットはまさに熱気に包まれた。
お昼には30度を超える暑さとなったが、単走1回戦ではランキングトップの熊久保信重を筆頭に6人のYOKOHAMA装着選手がベスト16に進出を果たした。
　
　
注目のベスト16追走トーナメントは16時からスタート。
この頃には日射しも多少は弱まり、やや強めに吹いている風が心地よさを感じさせる観戦には絶好のコンディションとなった。

1回戦でまず注目を集めたのはFD3Sの藤尾勉。単走からハイスピードな進入を見せていた藤尾は追走でも135km/hという進入スピードをマーク、ランキング5番手の手塚強を相手に一歩も譲らない走りを披露。
勝負はサドンデスに持ち越され、結果的には速度で勝っていたものの僅差で敗退となった。
しかし必ずや次戦以降、2回戦進出を果たしてくれることが期待させる一人である。
　
もう一人、注目のカードで観客を沸かせる走りを披露したのは"岡ちゃん"こと岡村和義。
お馴染みピンク色のシルビアを駆る岡村が1回戦で対戦したのは、モンスター・AE86を駆る吉岡稔記。そう、YOKOHAMA装着選手同士の対決である。

吉岡のゼッケン17番に対して岡村はゼッケン59番。この数字を見ても吉岡の方が「格上」の扱いとなるが、今回の岡村はひと味もふた味も違う走りを見せつけてくれた。
1本目は吉岡が前、AE86を見事にコントロールする吉岡に岡村も食らいついていき判定はほぼ五分。そして2本目、前に陣取った岡村は速さ・迫力ともに文句無しのドリフトを大観衆に見せつけ、吉岡を退けて2回戦進出を果たす。
　
　
迎えた2回戦に駒を進めたYOKOHAMA勢は岡村と廣田友和を下して勝ち上がった熊久保の二人。
この両者が対決することになるのだが、そのカードは決勝も含めて第3戦を通じて最も盛り上がった対戦だったと言っても過言ではないだろう。
　
シリーズリーダーの熊久保に対して1本目で先行した岡村が再び速度・角度・迫力ともに文句無しのドリフトでアドバンテージを得ることに成功。その走りに観客席からは大きな歓声と拍手が沸き起こり、審査員も興奮気味に「今日の岡村は凄い！」とアナウンス。
　
2本目、得意の後追いで岡村にアドバンテージを取られた熊久保が渾身の走りで逆転、勝負は大観衆の期待にも応えるかたちでサドンデスへと持ち越された。
サドンデス1本目、後追いの熊久保が得意のクイコミでアドバンテージ。しかし2本目、前後を入れ替え後ろにまわった岡村が、熊久保の横っ腹に飛び込む見事なクイコミでお返し、イーブンへと持ち込んでサドンデス続行となる。
　
サドンデス3本目もほぼ互角、しかしさすがにサドンデスの応酬が繰り返されると経験豊富な熊久保が貫祿を見せつけ、最後は粘る岡村を退けて準決勝進出を果たした。
対戦後、岡村はいつものように審査コーナーにマシンを停めて屋根の上に駆け上がり大観衆に手を振ってアピール。スタンドを埋めつくしたファンからは岡村の健闘を讃える歓声がしばらく鳴りやまず、多くのファンの記憶に残った一戦となった。
　
　
準決勝に進出した熊久保は残念ながら決勝に進出することなく無念の敗退。
シリーズランキングを2位へと下げたが、SUGOそしてエビスと続く"東北ラウンド"での逆転が期待されるところだ。
　
(文中敬称略)

"岡ちゃん"のニックネームで親しまれている岡村和義選手。
埼玉県で「ヤシオファクトリー」というショップを経営していることは既に広く知られているところ。
　
岡村選手といえばピンク色のシルビアがトレードマークとなっているが、以前開催されていたADMでもS14シルビアを駆っていた時代から存在感を見せていた。
戦績を振り返ると'03年のADMエビスで6位入賞。
'04年のADM最終戦でベスト8進出を決めると、'05年ADM開幕戦でもベスト8にその名を刻み、同年最終戦では遂に決勝進出を果たして実力を見せつける。この時は惜しくも準優勝に留まったものの、D1参戦権を獲得。
'06年にはD1のみならずナンバー付マシンで競われるD1ストリートリーガルにも参戦を開始、オートポリスでは激戦の末にストリートリーガルで初優勝(決勝対戦者2名のダブル優勝)を飾った。