1954年に産声をあげたマカオ・グランプリは、2013年で第60回という大会の歴史におけるひとつの節目を迎える。アジアで最も歴史あるモータースポーツイベントとして世界的な注目を集めるマカオ・グランプリ、もちろん2013年も例年通りに11月の第3週に開催される予定である。
ポルトガルの植民地だったという歴史を有するマカオは、アジアとヨーロッパの架け橋という位置づけであった。ゆえに互いの文化が融合して、今もなお情緒あふれる町並みが残り観光名所も多い。また世界最大級のカジノ都市という“夜の顔”もまた、紛れないマカオの姿である。
エキゾチックでエキサイティング。人口55万6千人あまり、しかしその面積は東京都世田谷区の半分ほどにあたる、わずか29.5平方キロメートル。想像通り、過密な人口密度はアジアらしい、ともすればやや喧騒に包まれた感じがする町の姿を見せるが、11月の第3週になるとそんな喧騒はレーシングマシンの甲高いエギゾーストノートにかき消される。
市街地の一般公道を封鎖して設けられた、全長6.117kmのギア・サーキットと呼ばれる特設レーシングコースを舞台に戦われるマカオ・グランプリ。
コースの両側をガードレールが囲い、ランオフエリアは事実上皆無というチャレンジングなストリートバトル。海側のハイスピード区間、一方で山側はテクニカル区間。一寸のミスは命取り、なれど相手の一寸の隙を突いて攻めなければパッシングは難しい、ドライバーのテクニックと精神力を極限で試されるレースである。
そんなマカオ・グランプリは4輪のみならず2輪も含めて、多彩なカテゴリーが開催される。その中でツーリングカーのWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)と並んで、フォーミュラカーのメインレースとして位置づけられているのが、F3インターコンチネンタルカップだ。これは各国・地域のF3シリーズで好成績をおさめたドライバーに参加権利が与えられるもので、事実上の「F3世界一決定戦」として注目を集めている。
F3規格がマカオに導入されたのは1983年、その初代ウィナーはアイルトン・セナ選手。その後もミハエル・シューマッハー選手やデビッド・クルサード選手など、このマカオ・グランプリでの勝利をきっかけにF1へとステップアップを果たした選手も多い。もちろんF1に限らず、ここから世界のメジャーカテゴリー参戦への道を歩んだドライバーは多く、トップドライバーを目指す若手選手にとっては世界への登竜門となっている。
レースは木曜日と金曜日の公式予選を経て、土曜日に予選レース、日曜日には決勝レースという流れになる。公式予選はコースオープンしている一定時間内でのベストタイムを賭けたアタック合戦で一般的な予選形態だが、結果を基にしてマカオでは予選レースが行われる。このレースは通常の決勝と同じスタイルであるが、その距離は日曜日の決勝よりも短め。そして、この予選レースの結果を受けて開催される決勝レースがメインイベントであり、マカオ・ウィナーと言えば決勝レースの勝者を指している。