近年、世界的に注目を集めているマシン・カテゴリーがFIA GT3である。
元々はアマチュアレーサーを対象とするカテゴリーを想定して2005年に設けられたものだが、今日までに上位カテゴリーが消滅したことにより、唯一のFIA(国際自動車連盟)タイトルGTマシンとなった。
FIA GT3とは、2ドアボディの市販スポーツカーをベースに、自動車メーカーがレース参戦用に仕立ててFIAから公認を受けた車両である。その改造範囲はある程度の制限が設けられており、市販車の持つポテンシャルや個性も反映される面が強い。
これは、そもそもが前述の通りアマチュアレーサー向けカテゴリーを想定していたからであり、無用なコストの高騰を抑える効果を狙ってのものだ。
さらに多くのメーカーが参入できるように、FIA自らの手で各車両のテストを行い、車種間の性能差を最低重量やエアーリストリクターの口径、燃料タンク容量などで調整する仕組みも採用されている。これはBOP(バランス・オブ・パフォーマンス)と呼ばれ、適宜発行されると使用するユーザーは対応することが義務づけられる。もちろん使用者(チーム)が独自の改造を施すことは禁止されている。
現在、FIA GT3の公認を受けている車両は30車種を超えており、世界各国の主立ったスーパースポーツモデルに設定がなされている。参戦車種の豊富さはFIA
GT3の大きな特徴であり、基本的に世界共通の規定となることから複数シリーズでの相互参戦も可能なのだ。
そんなFIA GT3車両で競われるレースのうち、ドイツのモータースポーツを統括するADAC(ドイツ自動車連盟)の管轄下で行われているのが、ADAC
GT-Mastersである。2007年にシリーズは発足、ドイツや近隣国を転戦するシリーズは毎大会40台を超えるバラエティ豊かなFIA
GT3マシンが参戦している。
レースは1大会2レース制となり、各60分の決勝を2人のドライバーで戦うフォーマット。ドライバーはプロフェッショナルとアマチュアの組み合わせとなり、元F1パイロットやDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)などで名を馳せた選手も顔を揃える。
ポイント制度はF1やWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)と同様に、優勝に25点、準優勝に18点、以下10位の1点までが配点されるシステム。このポイントに基づいてシリーズチャンピオンが競われているほか、チーム部門やアマチュアドライバー部門のランキング争いも熾烈なものが演じられる。
2013年は、昨年同様に4月のオッシャーズレーベンを皮切りに、全8大会/16戦のカレンダー。そのうち第2戦のベルギー(スパ-フランコルシャン)、第5戦のオーストリア(レッドブルリンク)、第7戦のスロバキア(スロバキアリンク)が、ドイツ国外での開催となる。